人事考課制度の運用を失敗する原因
<人事考課制度の見直し検討>
会社で運用中の人事考課(評価)制度が上手くいかない、評価された人が評価に納得できない、評価者がどのように判断したら良いのか分からないなどの不満が出ることがあります。
こんなときは、人事考課制度が悪いので、別の制度に変えた方が良いのではないかということが議論されます。
しかし、以前運用していた人事考課制度についても、同様の不満が出たため変更したのに、わずか数年で、同じ不満が出るようになったというのでは、人事部門が頭を抱えてしまいます。
<事実の把握と蓄積>
評価者が対象者から受ける印象で評価するのは誤りで、事実に基づく評価でなければならないということは、古くから言われています。
基本は事実に基づく評価ですが、これができていないために、人事考課制度が上手くいかないのなら、当然のことともいえます。事実に基づかない印象評価では、評価された人も納得できなくて当然です。
上司は、部下の具体的な仕事内容を把握しなければなりません。上司が部下の仕事に詳しくなければ、その部下への聞き取りが必要です。ここは、上司にコミュニケーション能力が求められます。
部下の仕事ぶりについて、「◯月◯日◯時頃、このようにしていた」という記録を残します。これだけで終わってしまうと、部下を育成する役割を果たせませんから、良いところを褒め、悪いところを指導して、これに対する部下の対応も記録します。ここでも良くわからない部分は、部下に尋ねて確認します。
このように、事実についての記録を残しておかなければ、人事考課制度の正常な運用はできません。定期的に実施している考課者研修も、この点が要となります。
記録を残すのが下手な人は、評価が下手ということになりますから、研修を受けても、どうしても記録を残せないという人は、評価者には向きません。元日に思い立って日記を付け始めても、長く続かないという人は、適性を欠いているかもしれません。
<制度の見直しより運用の見直しを>
このような事情がありますので、評価者が記録を残し、事実に基づく評価を行っても、なお人事考課制度が上手く運用できないということであれば、会社の評価の考え方にマッチした制度への変更をお勧めします。
しかし、運用の適正化によって、現在の人事考課制度に対する不満は、解消することが多いでしょう。
2024年7月5日
社会保険労務士 柳田 恵一
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