対価型セクハラと環境型セクハラ
<厚生労働省の説明>
セクシャルハラスメントには、対価型と環境型の2つがあるとされます。
厚生労働省は、それぞれ次のように説明しています。
対価型セクハラは、労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応(拒否や抵抗)により、その労働者が解雇、降格、減給、労働契約の更新拒否、昇進・昇格の対象からの除外、客観的に見て不利益な配置転換等の不利益を受けることです。
環境型セクハラは、労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等その労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることです。
<対価型セクハラの具体例>
対価型セクハラについては、次のようなものが典型的な例とされます。
- 事務所内において事業主が労働者に対して性的な関係を要求したが、拒否されたため、その労働者を解雇すること。
- 出張中の車中において上司が労働者の腰、胸等に触ったが、抵抗されたため、その労働者について不利益な配置転換をすること。
- 営業所内において事業主が日頃から労働者に係る性的な事柄について公然と発言していたが、抗議されたため、その労働者を降格すること。
<対価型セクハラの防止対策>
具体例での主体は、事業主と上司となっています。
また、セクハラ行為を拒否し抵抗した労働者に対して、解雇、降格、減給、労働契約の更新拒否、昇進・昇格の対象からの除外、客観的に見て不利益な配置転換等を行っています。
このことからすると、対価型セクハラを行うのは、これらの不利益を与える権限を有している事業主や管理職に限定されていることになります。
対価型セクハラの防止対策としては、事業主や管理職に対して、集中的に教育・研修を実施することが効果的だといえるでしょう。
また、「対価型」という用語は分かりにくいので、研修の中では「不利益型」という意味だと説明することをお勧めします。
<環境型セクハラの具体例>
環境型セクハラについては、次のようなものが典型的な例とされます。
- 事務所内において上司が労働者の腰、胸等に度々触ったため、その労働者が苦痛に感じてその就業意欲が低下していること。
- 同僚が取引先において労働者に係る性的な内容の情報を意図的かつ継続的に流布したため、その労働者が苦痛に感じて仕事が手につかないこと。
- 労働者が抗議をしているにもかかわらず、同僚が業務に使用するパソコンでアダルトサイトを閲覧しているため、それを見た労働者が苦痛に感じて業務に専念できないこと
<環境型セクハラの防止対策>
具体例での主体は、上司と同僚となっていますが、生じた結果は、それぞれ就業意欲の低下、仕事が手につかない、業務に専念できないとなっていますので、上司・同僚・部下、先輩・後輩など立場の違いに関わらず、全従業員を対象として幅広く教育・研修を行う必要があります。
また、「環境型」という用語は分かりにくいので、研修の中では「意欲低下型」という意味だと説明することをお勧めします。
<セクハラによる損失の拡大>
たった1件の事件が発生しただけでも、「ここはセクハラが起こるような職場なのか」「この会社ではセクハラを受けても我慢しないと不利益を被るのか」という意識が、長期にわたって従業員の心に残ります。
会社の損失は、たいへん大きなものとなってしまいます。
セクハラ防止に全社的に取り組むのは、当然のことといえるでしょう。
2024年6月21日
社会保険労務士 柳田 恵一
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