裁量労働制での労働者の同意(令和6年度より)
<専門業務型裁量労働制>
専門業務型裁量労働制とは、業務の性質上、その遂行の方法を大幅にその業務に従事する労働者の裁量に委ねる必要があるため、業務の遂行の手段や時間配分の決定等に関し、使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして定められた20の業務の中から、対象となる業務等を労使協定で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使協定であらかじめ定めた時間労働したものとみなす制度です。
<企画業務型裁量労働制>
企画業務型裁量労働制とは、事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査および分析の業務であって、業務の性質上、これを適切に遂行するには、その遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、業務遂行の手段や時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務等について、労使委員会で決議し、労働基準監督署に決議の届出を行い、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使委員会の決議であらかじめ定めた時間労働したものとみなす制度です。
<省令・告示の改正>
裁量労働制については、「労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令」(令和5年厚生労働省令第39号)および「労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針及び労働基準法施行規則第24条の2の2第2項第6号の規定に基づき厚生労働大臣の指定する業務の一部を改正する告示」(令和5年厚生労働省告示第115号)が令和6年4月1日から施行・適用されます。
<資料の公表>
これに先立ち、令和5年11月6日、厚生労働省が裁量労働制の見直しに関する新たな資料を公表しました。次のパンフレット4種が更新され、Q&Aの追補版が公表されています。
- 専門業務型裁量労働制について
- 企画業務型裁量労働制について
- 専門業務型裁量労働制の解説
- 企画業務型裁量労働制の解説
<労働者の同意>
労働者の同意については、特に注意が必要ですから、関連するQ&Aをここにご紹介させていただきます。
【1-4】
(Q)制度適用に当たっての同意取得は、書面であることが必要か。 |
(A)専門型・企画型の適用を受けることについての労働者の同意については、書面の交付を受ける方法のみならず、電子メールや企業内のイントラネット等を活用して電磁的記録の提供を受ける方法により取得することが可能である。
もっとも、いずれの方法で同意を取得するとしても、同意を取得するに際し、 ① 対象業務の内容を始めとする協定又は決議の内容等当該事業場における裁量労働制の制度の概要 ② 裁量労働制の適用を受けることに同意した場合に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度の内容 ③ 同意しなかった場合の配置及び処遇 について、使用者が労働者に対し、明示した上で説明して当該労働者の同意を得ることが必要である。 また、同意に関する労働者ごとの記録を労使協定又は決議の有効期間中及びその満了後3年間保存しなければならないため、書面や電磁的記録といった記録に残るもので同意を得た上、適切に保存する必要がある。 |
【1-5】
(Q)同意を取得するに当たっては、事業場における裁量労働制の制度の概要等について、使用者が労働者に対し、「明示した上で説明」して、当該労働者の同意を得ることとすることを労使協定又は労使委員会決議で定めることが適当であるとされているが、この「明示した上で説明」については書面で行う必要があるか。 |
(A)専門型・企画型の同意取得に際しての制度概要等の明示について、必ずしも書面のみに限定しているものではないが、労働者の同意は自由な意思に基づくものであることが必要であり、労働者が自身に適用される制度内容等を十分に理解、納得した上で同意を行うことが必要である。そのため、書面の交付による方法や、電子メールや企業内のイントラネット等を活用して電磁的記録を交付する方法等を用いることで労働者が制度を確実に理解できるよう明示をすることが適切である。
なお、「明示」のみならず「明示した上で説明」することを求めた趣旨は、労働者が自身に適用される制度内容等を十分に理解、納得した上で同意を行うことを担保する点にある。したがって、書面等で制度概要等を明示するのみでは足らず、それに加えて労働者が制度概要等を理解できるような説明を行うことが必要であり、例えば、適用対象者向けの説明会の開催(質疑応答ができる形で行われるもの)や、説明動画による説明を行った上で質問の機会(メールやイントラネットでの質問受付等)を設けることなどが考えられる。 |
【1-6】
(Q)労使協定又は決議の有効期間満了後、改めて労使協定を締結又は決議し、同制度を適用する場合、労働者の同意も再度取得する必要があるか。 |
(A)労働者の同意については、労働者ごとに、かつ、協定又は決議の有効期間ごとに取得する必要がある。そのため、労使協定又は決議の有効期間の満了に当たって、再度労使協定を締結又は決議する場合には、改めて労働者の同意を取得する必要がある。その際には、改めて制度の概要等を明示した上で説明し、労働者の同意を取得することが適当である。 |
2024年2月8日
社会保険労務士 柳田 恵一
給与・勤怠・労務システムに関するご相談はこちら