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初出勤を本人の希望により延期する危険

人事情報お役立ちブログ(毎週更新) 人事管理関連

<前職を退職できていないリスクの回避>

新卒採用の場合には殆どないのですが、中途採用(経験者採用)の場合には、転職に手間取って、約束した初出勤の日から勤務を開始できないということもあります。前職を退職することができず、結局、入社できなかったということもありえます。 

これを避けるためにも、採用にあたっては前職の「退職証明書」を提示するように求めるのが無難です。この「退職証明書」に記入する項目は、本人の希望に基づくことになっていますので、少なくとも在職期間、業務の種類、退職理由は入ったものを交付してもらうように、説明しておくのが良いでしょう。 

この「退職証明書」の交付は、労働基準法第22条第1項に定められた企業の義務です。罰則として、30万円以下の罰金が定められています。 

 

<個人都合による初出勤の先送り>

たとえば、4月1日付で入社し、この日に初出勤ということで、労働条件通知書や雇用契約書の交付をしておいたにもかかわらず、3月末になってから、「家庭の事情により4月10日からの勤務にしてほしい」などという申出があった場合、会社側はこれだけを理由に採用を取り消すことはできません。 

また、人手不足でもありますから、事情を聞いたうえで、4月9日までの給与が欠勤控除されるなどの説明をして、やむを得ず了解することも多いでしょう。 

これで、その後は通常通りに勤務してもらえるのなら、大きな問題にはなりません。 

 

<さらに欠勤が続く場合>

ところが、4月10日には予定通りに出勤したものの、4月11日には無断欠勤し、4月12日になって、「今まで経験がなかったので分からなかったが、メンタルクリニックを受診したところ、うつ病の症状だと言われたので、しばらくお休みしたい」という電話連絡が入ったらどうでしょう。 

正しい対応としては、速やかに医師の診断書を提出するよう求めることになります。しかし、これについては就業規則に根拠規定が必要です。 

なかなか診断書が提出されず、無断欠勤が続いているものと判断して、会社が採用取消に踏み切った時点で、4月15日以降であれば、解雇予告手当を支払うか、解雇予告期間を設けるかの選択に迫られます。 

労働基準法第21条但書は、入社して14日以内の解雇にあたっては、解雇予告手当も解雇予告期間も不要としていますが、これは初出勤の日からカウントするのではなく、雇入れから14日以内ですから注意が必要です。 

 

<問題社員の場合>

問題社員といわれる人の中には、会社の違法な行為を誘発しておいて、賠償金などを請求する者もいます。 

代理人弁護士ではなく、本人の名で会社に内容証明郵便が送りつけられるなど、こうしたことに慣れていることをうかがわせる人もいます。 

先ほどの「退職証明書」の退職理由欄には「自己都合」と記載されているでしょうし、かつては短期間で転職を繰り返す応募者が敬遠されていたのですが、今では労働力流動化が進んでいますので、必ずしも否定的に見られてはいません。 

問題社員を採用しないようにする努力にも限界がありますので、会社としてはリスクを考えて、従業員の退職・解雇については、違法性を指摘されないように、十分な注意を尽くすことが必要です。 

2024年6月21日

社会保険労務士 柳田 恵一

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