リソースページへ戻る

パワハラといじめとの区別

人事情報お役立ちブログ(毎週更新) 人事管理関連

<パワハラ事件なのか?>

職場の同僚4人から監禁された挙げ句、電車に飛び込むよう強要されたという犯罪がニュースとなりました。これは、ひどいパワハラだと感じた方も多かったようです。 

しかし、当初は行き過ぎた指導や叱責であり、パワハラに該当していたものが、途中から単なるいじめに変化していったと思われます。 

 

<パワハラの成立要件>

パワハラは、職場において行われる次の1.~3.の要素すべてを満たす行為とされます。 

1.優越的な関係を背景とした言動であって、 

2.業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、 

3.労働者の就業環境が害されるもの 

そして、客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は、パワハラに該当しないとされます。 

 

<事件のパワハラ該当性>

上記の事件では、監禁したり電車に飛び込むことを強要したりが、業務指示や指導とは無関係に行われています。 

「2.業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、」というのは、そのベースに業務指示や指導があって、必要かつ相当な範囲を超えていることを意味します。しかし、この事件の場合、犯人の4人は、業務指示や指導を言い訳に犯行に及んだのかもしれませんが、業務指示や指導の意図など、まったくなかったと考えるのが自然です。たまたま同じ職場の同僚が加害者となり、被害者となっていたに過ぎないのです。 

さらに、パワハラという略称は「職場におけるパワーハラスメント」のことをいいます。ここで「職場」は、広く業務が行われる場所を指していますから、業務で移動中の交通機関の中なども含まれますが、この事件は、職場の外での犯行です。これらは、そもそもパワハラに該当しません。 

 

<企業の責任>

職場におけるパワーハラスメントであれば、企業は防止対策に努める義務を負っています。しかし、従業員が職場外で犯罪行為を行わないように指導・監視する義務までは負っていません。むしろ、犯罪行為を行った従業員に対しては、懲戒処分を検討することでしょう。 

それでも、職場でのパワハラがエスカレートして、犯罪行為につながったとみられる場合には、パワハラを防止できなかった点で、企業は道義的な責任を問われることがあります。 

こうしたことまで想定すれば、企業はパワハラに限らず、すべてのハラスメントを排除するよう努力を重ねるべきであるといえます。

2025年3月12日

社会保険労務士 柳田 恵一

給与・勤怠・労務システムに関するご相談はこちら