ダブルワークの雇用保険加入
<雇用保険の加入者(被保険者)>
適用事業主に雇用されている労働者は、本人の意思にかかわらず、原則として雇用保険に加入します(被保険者となります)。
被保険者は、一般被保険者、高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者および日雇労働被保険者の4つに区分されます。
季節的に雇用される者のうち一定の要件を満たす者は短期雇用特例被保険者、日々雇用される者または30日以内の期間を定めて雇用される者は日雇労働被保険者に区分されます。
これ以外の圧倒的多数の被保険者は、65歳以上であれば高年齢被保険者、65歳未満であれば一般被保険者となります。
ただし、1週間の所定労働時間が20時間未満である者は除外され、被保険者とはなりません。
「1週間の所定労働時間」とは、就業規則、雇用契約書等により、その者が通常の週に勤務すべきこととされている時間のことをいいます。この場合の通常の週とは、祝祭日及びその振替休日、年末年始の休日、夏季休暇などの特別休日を含まない週をいいます。
また、同一の事業主の適用事業に継続して31日以上雇用されることが見込まれない者も除外されますし、昼間学校に通う学生も除外されます。
<ダブルワークの場合の原則>
同時に複数の会社で雇用関係にある労働者が、それぞれの会社で雇用保険の加入要件を満たす場合については、生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける雇用関係にある会社でのみ加入するというルールになっています。
A社で1週間の所定労働時間が25時間、B社で1週間の所定労働時間が20時間でダブルワークだとします。
この場合、所定労働時間はA社の方が長いのですが、B社の方が月額の賃金が高いのであれば、B社の方で雇用保険に入ることになります。
また、A社で雇用保険に加入していたところ、途中からB社でも働くようになったという場合、この例では、A社で雇用保険から脱退(資格喪失)し、B社で加入(資格取得)することになります。
なお、雇用保険の加入要件はそれぞれの会社で満たす必要があり、いずれの会社も加入要件を満たさない場合には雇用保険に加入できません。
<マルチジョブホルダー制度>
雇用保険マルチジョブホルダー制度は、令和4(2022)年1月1日に開始された制度です。
複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が、そのうち2つの事業所での勤務を合計して適用対象者の要件を満たす場合に、本人からハローワークに申出を行うことで、申出を行った日から特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができる制度です。
マルチ高年齢被保険者となるには、労働者が以下の要件をすべて満たすことが必要です。加入後の取扱は通常の雇用保険の被保険者と同様で、任意脱退はできません。
雇用保険に加入後、別の事業所で雇用された場合も、以下の要件を満たさなくなった場合を除き、加入する事業所を任意に切り替えることはできません。
【雇用保険マルチジョブホルダー制度の適用対象者】
1.複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること
2.2つの事業所の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間 未満) 3.2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること |
<令和10年10月の法改正>
令和10(2028)年10月1日より、雇用保険の被保険者の要件のうち、1週間の所定労働時間が「20時間以上」から「10時間以上」に変更され、適用対象が拡大されます。
これに伴い、マルチジョブホルダー制度の見直しも想定されます。
2025年1月8日
社会保険労務士 柳田 恵一
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