個人事業者等の健康管理に関するガイドライン
<個人事業者等の健康管理に関するガイドライン>
令和6(2024)年5月28日、厚生労働省労働基準局から「個人事業者等の健康管理に関するガイドライン」が公表されました。
旧来の考え方からすれば、個人事業者の健康は自己管理ということになります。
しかし現在では、労働者と個人事業者との中間的な形態で働いている人々も増え、個人事業者等は労働者と同じ安全衛生水準を享受すべきであるという考え方が取られるようになってきました。
こうした考え方のもとで、「個人事業者等の健康管理に関するガイドライン」が策定され、個人事業者等が健康に就業するために、個人事業者等が自分自身で行うべき事項、注文者等が行うべき事項や配慮すべき事項等を明らかにし、それぞれの立場での自主的な取り組みを促すこととされたのです。
<労働者性の判断>
雇用契約(労働契約)を締結せず、形式的には個人事業者等として請負契約や準委任契約などの契約で仕事をする場合であっても、具体的な働き方の実態に基づいて、労働基準法上の「労働者」であるかどうかが判断されます。
実質的に見て、「労働者」に該当すると判断される場合には、このガイドラインによるのではなく、「労働者」として、労働基準法や労働安全衛生法などの労働法令が適用されることに注意する必要があります。
<個人事業者等が自分自身で行うべき事項>
個人事業者等は、事業を行う上で、自らの心身の健康に配慮することが重要です。
ガイドラインでは、個人事業主等が各種支援を活⽤しつつ、次の各項目を含め、自ら健康管理を行うこととされています。
□ 健康管理に関する意識の向上
□ 危険有害業務による健康障害リスクの理解
□ 定期的な健康診断の受診による健康管理
□ 長時間の就業による健康障害の防止
□ メンタルヘルス不調の予防
□ 腰痛の防止
□ 情報機器作業における労働衛生管理
□ 適切な作業環境の確保
□ 注⽂者等が実施する健康障害防⽌措置への協⼒
<注文者等が行うべき事項や配慮すべき事項>
注文を受けて仕事を行う場合、注文者等による注文条件等が個人事業者等の心身の健康に影響を及ぼす可能性があります。
個人事業者等が健康を適切に管理するためには、注文者等が必要な措置を講じることも重要です。
また、個人事業者等が健康に就業することは、その個人事業者等と継続的に業務を行う注文者等にとっては、事業継続の観点からも望ましいことです。
ガイドラインは、注文者等に対して、以下の事項を実施するよう求めています。
また、個人事業者等が以下の事項の実施を要請したことを理由として、個⼈事業者に対する不利益な取り扱いをしてはならないとされています。
□ 長時間の就業による健康障害の防⽌
□ メンタルヘルス不調の予防
□ 安全衛生教育や健康診断に関する情報の提供、受講・受診機会の提供等
□ 健康診断の受診に要する費用の配慮
□ 作業場所を特定する場合における適切な作業環境の確保
<ガイドライン利用にあたっての注意>
ガイドラインには、それぞれの業種・職種に特有の実情や商慣習を踏まえた具体的な取組内容までは記載されていません。
個人事業者等・注文者等双方の意見を十分に踏まえて利用することが求められています。
2024年9月11日
社会保険労務士 柳田 恵一
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