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採用選考にあたって問題なく健康状態を確認しておく方法

人事情報お役立ちブログ(毎週更新) 人事管理関連

<雇い入れ時の健康診断>

雇い入れ時の健康診断は、1週間の所定労働時間が正社員の4分の3以上で、1年以上勤続する予定の従業員について法的義務があります。〔労働安全衛生法66条1項、労働安全衛生規則45条〕 

また、採用側の義務ですから、基本的には採用側が実施し費用も負担するのが法の趣旨に適合します。 

しかし、応募者が自主的に健康診断の結果を提出することも許されます。LGBTQ+への配慮も必要ですから、これを拒む理由はないでしょう。 

問題は、法令の条文を素直に読むと、雇い入れ時の健康診断は採用決定後に行うべきものであることと、法定の健診項目だけでは、入社後の業務に耐えうるか確信が持てない点です。 

 

<健康状態の確認方法>

健康状態に問題のある応募者を採用してしまっても、採用取消や解雇は簡単にはできません。ほとんどの場合、採用取消や解雇は無効とされ、損害賠償請求の対象とされてしまいます。 

トラブルになるのは、入社後に健康不良が発覚したものの、「その点については質問されませんでした」と言ってかわされていまい、採用側は有効な手を打てなくなるというケースです。就業規則に、採用時の虚偽申告は採用取消や解雇の理由となりうることが規定されていても、聞かれていないことには答える義務がないからです。 

かといって、採用面接の段階で、既往症、服薬中の薬やサプリメントなどをすべて申告してもらうというのは、明らかにプライバシーの侵害です。 

それでも採用側としては、勤務するにあたって特別に配慮すべきことはないか、通院や定期検査のために休暇を取る必要はないかなど、欲しい情報は多岐にわたります。 

 

<健康状態確認シート>

採用面接の中で、業務内容を詳細に説明し、残業や休日出勤の実態を含め、労働時間や出勤日数を説明します。 

そのうえで、「現在の健康状態で説明を受けた業務を問題なくこなせますか。健康面で特に配慮が必要なことはありませんか」という問いに対して、応募者の回答を得ます。 

これは口頭ではなく、「健康状態確認シート」のような文書で行い、説明者欄と応募者欄を設けておいて、それぞれが署名することになります。 

この時点で判明していない疾病は確認の対象外となります。自覚症状がなく、医師の診察も受けていないような疾病については、特に応募者からの申し出がなくても、入社後に発症したことについて本人を責めることはできません。 

ましてや、入社後のパワハラによって発症した精神疾患などは、本人には責任のないことです。 

 

<実務の視点から>

入社前に業務内容を詳細に説明しておくということは、新卒採用など配置転換が想定されるような場合には、大変面倒なことではあります。 

しかし、入社後にミスマッチが発覚して、退職されるよりは良いのではないでしょうか。 

 

2024年11月15日

社会保険労務士 柳田 恵一

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