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あのフリーランスは法的にはうちの従業員なのか?

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<フリーランス新法の施行>

「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法)が令和6(2024)年11月1日に施行されました。 

個人で働くフリーランスに業務委託を行う発注事業者に対し、業務委託をした際の取引条件の明示、給付を受領した日から原則60日以内での報酬支払、ハラスメント対策のための体制整備等が義務付けられました。 

法の取引の適正化に係る規定については主に公正取引委員会及び中小企業庁が、就業環境の整備に係る規定については主に厚生労働省がそれぞれ執行を担います。 

 

<名ばかりフリーランス>

フリーランスは個人事業主であり、労働法の保護を受けない弱い立場なので、フリーランス新法によって保護が図られるようになりました。 

しかし、そもそも労働法の保護を受けるはずの労働者が、個人事業主扱いされて労働法による保護を否定されているケースがあります。 

実態は労働者であるにもかかわらず、業務委託契約(請負契約、委任契約、準委任契約、フリーランス契約)を交わして、労働者性を否定することが行われています。 

 

<労働者との区別基準>

労働基準法第9条は、「労働者」を「事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」と規定しています。 

また実務上、「労働者」に当たるかどうかは、以下の2つの基準(使用従属性)で判断されます。 

具体的には、「労働者性の判断基準」に基づき、実態をもとに総合的に判断されます。 

  1. 労働が他人の指揮監督下において行われているかどうか、すなわち、他人に従属して労務を提供しているかどうか
  2. 報酬が、「指揮監督下における労働」の対価として支払われているかどうか

 

<チェックリスト>

上の区別基準でもなお抽象的で、具体的な事実に当てはめるのは無理があります。 

厚生労働省が公表しているフリーランス向けチェックリストによると、次の8項目に当てはまる事実が多いほど、労働者性が強く肯定されることになります。 

 

  • 委託事業者から仕事を頼まれても、これを断る自由がある 
  • 毎日の仕事量や配分、進め方は、基本的に自分の裁量で決定する 
  • 委託事業者から仕事の就業場所や就業時間(始業・終業)を決められていない 
  • 自分の都合が悪くなった場合、頼まれた仕事を代わりの人に行わせることができる 
  • 報酬は仕事の出来高に見合ったものであり日給や時間給ではない 
  • 仕事で使う材料・機械・器具等は自分で用意している 
  • 同種の仕事に従事する正規従業員と比較した場合、報酬の額は正規従業員よりも高額である 
  • 自由に他の委託事業者の仕事に従事できる 

 

 

<実務の視点から>

フリーランスに業務を委託していて、そのフリーランスについてチェックリストの各項目を点検してみたところ、いくつか当てはまるものがあって中途半端な場合には、労働者かフリーランスかを明確化するため、事実関係を修正することをお勧めします。 

つまり、当てはまるものを解消して、雇用関係を認め、労働条件通知書の交付や就業規則の説明をします。 

反対に、当てはまらないものを解消して、業務委託契約書(請負契約書、委任契約書、準委任契約書)を交わします。そして、フリーランス新法に定められた配慮をすることになります。 

いつまでも中途半端な状態を続けていると、業務中の事故で長期間働けなくなった場合に、対応に苦慮するなど、大きなトラブルとなることがありますので、この機会を逃さず早めに対応しましょう。 

2024年12月4日

社会保険労務士 柳田 恵一

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