就活ハラスメント防止対策
<跡を絶たない就活ハラスメント>
令和7年正月早々、就活中の女子大学生に性的暴行が行われたという事件が報道されました。
大手メーカーの29歳の社員が、女子大学生の自宅に上がり込んでの犯行だということです。
被害者は「帰って欲しかったが、志望する会社に勤務していて、就職活動の相談もしていたので、断りにくかった」と話しているそうです。
<就活ハラスメントとは>
就活ハラスメントとは、就職活動中やインターンシップの学生等に対するセクシャルハラスメントやパワーハラスメントのことをいい、立場の弱い学生等の尊厳や人格を不当に傷つける人権侵害行為です。
面接で恋人がいるのかを尋ねるなど、採否の判断に関係のない事項を聞き出そうとする、採用の見返りに不適切な関係を迫る、食事やデートにしつこく誘うなどのセクハラ行為が該当します。
また、インターンシップ中の学生に対して、人格を否定するような暴言を吐くなど、誰に対しても行ってはならない人権侵害行為も含まれます。
<就活ハラスメントのリスク>
就活ハラスメントは、被害を受けた学生等にとって大きな精神的ダメージが生じますが、企業にとっても重大なリスクが発生します。
・就活ハラスメントのあった会社として、社会的信用を失い、企業イメージが低下します。
・ハラスメントが横行している会社だと学生たちに認識され、応募が減少する可能性があります。
・従業員の働く意欲やモラルが低下し、生産性が低下しますし、定着率も低下するリスクがあります。
<就活ハラスメントの防止>
労働施策総合推進法及び男女雇用機会均等法に基づく指針には、就活ハラスメントの防止が明記されています。
・雇用管理上の措置として、職場におけるハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化等を行う際に、就職活動中の学生等に対するハラスメントについても、同様の方針を示すことが望ましい
・就職活動中の学生等から職場におけるハラスメントに類すると考えられる相談があった場合に、その内容を踏まえて、必要に応じて適切な対応を行うように努めることが望ましい
<実務の視点から>
万一、採用担当者等が就活ハラスメントを行ったことが発覚した場合でも、就業規則に、これに対する懲戒規定が設けられていなければ、会社が懲戒を行うことはできません。
就活ハラスメントの他、お取引先の従業員へのハラスメントなどを想定し、自社の従業員に対するものだけではなく、社外の人に対するハラスメントの禁止と、これに対応する懲戒規定が必要です。
2025年3月7日
社会保険労務士 柳田 恵一
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