シフト制で勤務する従業員の労働条件通知書
<労働条件通知書の法定項目>
令和6(2024)年4月から、労働条件明示のルールが改正されていますが、これによっても、シフト制で勤務する従業員の労働条件明示については、特別な配慮が加わりませんでした。
新型コロナウイルス感染症拡大の時期には、「シフトが組まれていないので休業は想定できない」という理由で、休業手当が支給されないなどの不合理が指摘されていました。
これを受けた法改正などは行われなかったのですが、令和4(2022)年1月7日には、厚生労働省から「いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」という文書が発出され、企業に対して一定の配慮を求めています。
以下、この文書のポイントをかいつまんで、ご紹介させていただきます。
<企業に配慮が求められる理由>
労働者のニーズの多様化や、企業側の労働力需要の変化への対処等を背景として、パートタイム労働者やアルバイトを中心に、労働日や労働時間を一定期間ごとに調整し、特定するような働き方が取り入れられています。
いわゆる「シフト制」です。
労働契約を交わした時点では、労働日や労働時間を確定的に定めず、一定期間ごとに作成される勤務割や勤務シフトなどにおいて、初めて具体的な労働日や労働時間が確定するような形態が取られています。
シフト制では、その時々の事情に応じて柔軟に労働日・労働時間を設定でき、契約当事者双方にメリットがある一方で、企業側の一方的な都合により、労働日がほとんど設定されなかったり、労働者の希望を超える労働日数が設定されたりすることにより、労働紛争が発生することもあります。
こうした労働紛争の発生を未然に防止するため、企業側には一定の配慮が求められることになるのです。
<シフトの作成・変更>
労使双方の立場から、労働条件の予見可能性を高め、労働紛争を防止するという観点から、企業側が一方的にシフトを決めることは望ましくなく、労使で話し合ってシフトの決定に関するルールを定めておくことが考えられます。
●シフト作成のルール
- シフト表などの作成に当たり、事前に労働者の意見を聴取すること
- 確定したシフト表などを労働者に通知する期限や方法
●シフト変更のルール
- シフトの期間開始前に、確定したシフト表などにおける労働日、労働時間等の変更を使用者または労働者が申し出る場合の期限や手続
- シフトの期間開始後に、使用者または労働者の都合で、確定したシフト表などにおける労働日、労働時間等を変更する場合の期限や手続
一旦シフトを確定させた後に、労働日や労働時間等を変更することは、労働条件の変更に該当します。
労働契約法第8条は「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。」と規定していますから、確定した労働日、労働時間等の変更は、労使双方の合意により可能となります。
●標準的な労働日数、労働時間数などの設定
労働条件通知書には、次のことを記載しておくことで、労働紛争を未然に防止できます。
- 一定の期間において、労働する可能性がある最大の日数、時間数、時間帯(例:「毎週月、水、金曜日から勤務する日をシフトで指定する」など)
- 一定の期間において、目安となる労働日数、労働時間数(例:「1か月○日程度勤務」、「1週間当たり平均○時間勤務」など)
- 一定の期間において、最低限労働する日数、時間数などについて定めることも考えられます。(例:「1か月○日以上勤務」、「少なくとも毎週月曜日はシフトに入る」など)
2024年6月7日
社会保険労務士 柳田 恵一
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