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求人詐欺と勘違いされないように人事担当者が気を付けるべきこととは

人事情報お役立ちブログ(毎週更新) 人事管理関連

<求人広告の性質>

契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(申込み)に対して相手方が承諾をしたときに成立します。〔民法第521条第1項〕〕

雇用契約も契約ですから、申込みに対する承諾によって成立します。

求人広告は、雇用契約の内容の一部を示しているものではありますが、雇用契約の詳細を示しているものではありません。

しかも求人広告は、あくまでも広告であって、雇用契約の締結を申し入れる意思表示(申込み)とは理解されていません。

求人広告の法的な性質は、応募者からの申込みを誘う意思の通知に過ぎない「申込の誘引」とされています。

そして、応募者からの申込みがあって、使用者が承諾すると、雇用契約が成立すると理解されています。

つまり労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立するのです。〔労働契約法第6条〕

 

<明らかな求人詐欺>

ハローワークの求人票を含め、求人広告には「月給25万円~40万円」など幅のある表示もあって、具体的なことは採用面接を経て決まるという場合もあります。

ですから、応募者が月給40万円を期待して面接に臨んだとしても、履歴書の内容や面接での受け答えに基づき、採用側が月給30万円を提示することがあっても、これは詐欺的な行為ではありません。

しかし、採用側が最初から月給20万円以下での採用しか考えていないにもかかわらず、求人広告に「月給25万円~40万円」と表示していたのであれば、明らかに求人詐欺となります。

もっとも、こうした形での求人詐欺は、ハローワークや求人情報事業者にも、求職者にも見つけることができません。

残念ながら、取り締まることは困難でしょう。

明らかに求人詐欺といえるのは、求人広告に「月給25万円~40万円」と表示しておきながら、面接で最初から「月給は頑張れば20万円」などという説明が始まったような場合に限られます。

 

<複数の求人広告がある場合>

法的な問題がないにもかかわらず、面接を受けた応募者から求人詐欺だと思われるケースもあります。

たとえば同一の会社が、同一の職種で、経験者月給32万円と未経験者月給25万円の2つの求人広告を出していたとします。

これに対して、経験者月給32万円の求人広告だけを見て、1年間の業務経験のある人が応募したとします。

面接で、1年間で経験した内容が不十分と見られ、「月給25万円で採用したい」ともちかけられたら、「あれはおとり広告だった」と感じてしまいます。

 

<求人広告と違う労働条件を提示する場合>

経験者月給32万円の求人広告しか出していない会社に、未経験者が応募してくることもあります。

最初から人材要件を満たしていないのですが、経営者など採用権限のある人が受付・面接を行っている場合には、採用難の折、とりあえず会ってみることもあります。

そして面接の際に、「未経験者だから月給25万円で良ければ採用します」という提示をすれば、これが新たな雇用契約の申し込みとなり、応募者が承諾すれば契約成立となります。

しかし応募者は、人一倍努力を重ねて仕事を早く覚える約束をすれば、月給32万円で採用されるのではないかという期待を抱くこともあります。

求人広告と異なる労働条件での採用では、求人詐欺にあたると考えることもあるでしょう。

さらに、事務職で応募したところ、「他の応募者で採用枠が埋まってしまったけれど、営業職に欠員が1名出たのでいかがでしょうか」と打診されて、これに応じるというのは普通に行われていることです。

このように、求人広告と実際の労働条件とが異なる場合に、採用側が新たな労働条件を明示していれば法定な問題はないのですが、応募者の心情としては、会社の姿勢を疑いたくなることもあるのです。

 

<トラブル防止のために>

応募者の見た求人広告と、面接の中で会社から提示する労働条件とで食い違いがある場合には、ひと手間かける必要があります。

まず、なぜ求人広告と異なる労働条件を提示するのか、その理由を具体的に分かりやすく説明します。

つぎに、求人広告の内容での労働条件と、新たに提示する労働条件とで、具体的にどの項目がどのように異なるのか、できれば文書を交付して説明します。

最後に、新たに示した労働条件は、会社からの新たな提案なので、同意するしないは応募者の自由であることを伝えます。

こうしたことは、次善の策ともいえますから、求人広告どおりの条件で採用することが基本であることを、忘れないようにしましょう。

 

2023年6月26日

社会保険労務士 柳田 恵一

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