パワハラの相談窓口がパワハラで訴えられるなど不適格となる場合を想定した対応
<パワハラ相談窓口の人数>
社内のパワハラ相談窓口が1人だけの場合、その人からパワハラを受けている従業員にとっては、実質的に相談窓口がないに等しい状態となってしまいます。
このことから、相談窓口は複数の社員とする必要があるといえます。
それでも相談者への対応は、一対一で行うのが一般的な形です。
相談者から特に指名がなければ、窓口の中の誰が対応しても構わないのですが、特定の人がいつも指名から外されるという現象が見られれば、人選の見直しを検討すべきでしょう。
<パワハラ相談窓口の不適格>
パワハラ相談窓口に相談したところ、その窓口の担当者からパワハラを受けたという申し出があった場合、慎重に調査して「パワハラに該当する行為はなかった」と公表できるのでなければ、その窓口担当者は、当面メンバーから外れるべきです。
また、窓口業務とは別の業務についてトラブルが発生し、窓口担当者がパワハラで訴えられている場合、裁判は公開が原則ですから、どこから情報が漏れるか分かりません。この状態で、相談窓口にその担当者がいるというのは、社内に不信感が広がる恐れがあります。
<就業規則の規定>
就業規則に、たとえば「総務部長をパワハラ相談窓口とする」のような規定があって、その総務部長が社内でパワハラ関係のトラブルの当事者となり、あるいはパワハラの加害者として訴えられたような場合でも、その人が総務部長である限り、パワハラ相談窓口を続けるというのは不都合です。
「総務部長に事故ある場合、人事部長が代行する」のような規定を置いて、万一に備えておくのが良いでしょう。
<一段上のパワハラ教育>
社内でパワハラについての教育・研修を実施しないまま、パワハラ相談窓口を設ければ、パワハラとはいえない行為について、「あれはパワハラではないか」という相談が相次ぐことも予想されます。ですから相談窓口を設ける前に、ある程度までは、パワハラについての社員教育を進めておかなければなりません。
一方で、総務部長だから、あるいは人事部長だから、パワハラ相談窓口に適任ということでもありません。相談窓口を担当する社員は、他の社員よりも一段上のパワハラ教育を受けている必要があります。外部のやや専門的な研修を受けるなどして、その能力を高めておくことも大切です。
2024年11月12日
社会保険労務士 柳田 恵一
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