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トランスジェンダーの社内での通称名

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<トランスジェンダー> 

トランスジェンダーは、性自認と身体的性とが一致していない人を指す言葉です。 

性自認は、自分について認識している性別をいいます。男性・女性のほか、中性や無性もありますし、8割男性2割女性という性自認もあります。 

身体的性は、身体構造から判断される性をいいます。戸籍上は、これによって判断され性別が決定されるのですが、性自認と同様に男性・女性のほか、中性や無性もあります。身体構造上、9割女性1割男性ということもあります。 

性自認にしても、身体的性にしても、個性の幅が広いということです。 

こうしてみると、トランスジェンダーが、極めて少数派ということではないことが解かります。 

 

<通称名の使用> 

通称名は、戸籍上の名前ではなく、日常生活や職場で使用している名前を指します。トランスジェンダーの中には、戸籍上の名前ではなく通称名の使用を希望する人がいます。名前から戸籍上の性別が推測されることもあるため、カミングアウトせずに働きたいトランスジェンダーとしては、戸籍上の性別がバレないように通称名を使いたいというニーズがあるのです。 

 

<性別の変更> 

「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」により、戸籍上の性別を変更することも可能ではあります。 

しかし、この法律での「性同一性障害者」の定義は、「生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別であるとの持続的な確信を持ち、かつ、自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者であって、そのことについてその診断を的確に行うために必要な知識及び経験を有する二人以上の医師の一般に認められている医学的知見に基づき行う診断が一致しているもの」という医学的見地に基づくものであって、かなり限定されています。 

そして、この法律によれば、性別変更のためには手術が必要とされており、身体的経済的負担から対応できる人は少ないという現実があります。最高裁判所は、手術を義務づけるのは違憲だと判断していますので、今後の法改正が待たれます。 

 

<名前の変更> 

戸籍の性別変更とは別に、名前を変更することも法的には可能です。 

名前を変更するには、家庭裁判所での手続きが必要で、通称名の使用実績を証明する資料として、年賀状、公共料金の明細、学校の成績証明書、名刺、社員証、健康保険証などがあります。 

ここでも、通称名の使用実績が問われるわけです。 

 

<トランスジェンダーの通称名の特殊性> 

一般的な通称名としては、結婚した際の旧姓や外国籍の人の通称名があります。 

しかし、トランスジェンダーの通称名の使用と、他の通称名の使用とでは違いがあります。トランスジェンダーの場合には、戸籍名を周囲に知られたくないという要請があります。 

就業規則には、本人から申し出があった場合、通称名の使用を認める旨、姓(氏)は変更できない旨、社会保険など公的手続きには戸籍上の氏名を用いることなどを規定しておく必要があるでしょう。 

2024年4月24日

社会保険労務士 柳田 恵一

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