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解雇通告後の無断欠勤と損害賠償

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<解雇予告の効果>

労働基準法は、解雇の予告について、「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない」と規定しています。〔労働基準法第20条第1項本文〕 

つまり、使用者は労働者に対して、解雇の30日以上前に予告をしておけば、解雇予告手当を支払わなくても済むということです。 

たとえば労働者に対して「7月末日をもってあなたを解雇します」と6月20日に使用者が予告した場合には、解雇の効力が発生し労働契約が終了するのは、6月20日ではなく7月末日です。 

 

<解雇予告の誤解>

ところが日常用語では、解雇の予告をしたことを「解雇した」と表現したり、解雇の予告を受けたことを「解雇された」と表現したりすることがあります。 

このためか労働者側が、解雇の予告を受けたことをもって、解雇の効力が発生したものと誤解してしまうことがあります。 

そして、解雇の予告を受けた後、無断欠勤が続くということがあります。 

これは「解雇されたのだから出勤しなくてもよい」という誤解によるものです。 

また、解雇の予告を受けたことを不快に思い、あるいは、ショックを受けて、出勤しなくなるということもあります。 

 

<会社からの損害賠償請求>

こうした場合には、予定した仕事に穴が開いてしまうため、会社側からその労働者に対して、損害賠償の請求ができるのではないかと考えることもあるでしょう。 

しかし、会社の損害額とこれに基づく賠償額を明示しなければ、労働者への請求は単なる言いがかりとも取られますから、確実な計算根拠を示さなければならないのです。 

ほとんどの場合に、この計算根拠を示すことは困難ですから、賠償請求を諦めざるを得ません。 

 

<賠償請求ができる場合>

架空の例ですが、解雇を通告されたのが、プログラム開発のプロジェクトリーダーだったとします。 

そのプロジェクトの目的は、東京都から発注されたシステムの開発で、納期は9月10日とされており、この納期に遅れた場合の遅延損害金が1日につき5万円発生する契約だったとします。 

プロジェクトリーダーは、このことを知っていたし、会社が容易に代わりの人材を手配することはできないと知っていたとします。 

会社は、本人の年次有給休暇取得や転職の準備などを考えて、10月末をもって解雇することの通告を8月21日に行っていたとします。 

この解雇通告が解雇権の濫用ではなく、会社側にも6割の過失があって、本来の納期に10日遅れたとします。 

この場合、会社からこのプロジェクトリーダーに請求できる損害賠償金は、
5万円 × 10日 × 6割 = 30万円
このように算出することができます。 

 

<給与からの控除>

給与は後払いですから、10月末をもって退職した場合には、最後の給与支払が11月となるでしょう。 

その金額が、損害賠償の金額を超えていたとしても、会社側の一方的な判断で、給与から控除することはできません。 

これは賃金全額払いの原則に反して違法となるからです。〔労働基準法第24条第1項本文〕 

こうしたことにも、十分に注意が必要です。 

 

2024年6月14日

社会保険労務士 柳田 恵一

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