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【監修付き】扶養親族とは?条件や所得との関係も紹介

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扶養家族がいると税金が安くなることは、なんとなく感じると思います。税金に関わる扶養家族は、正しくは「扶養親族」というのですが、扶養親族がいることで、税金が安くなる仕組みを詳しく見てみましょう。

 

扶養親族とは?

所得税法上の扶養親族とは、その年の12月31日の現況で、次の4つの要件のすべてに当てはまる人です。

①配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族をいいます。)または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。

②納税者と生計を一にしていること。

③年間の合計所得金額が48万円以下であること。(収入が給与のみの場合は103万円以下、収入が公的年金のみの場合には64歳まで108万円以下、65歳以上は158万円以下など)

④青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと、または、白色申告者の事業専従者でないこと。

参考:国税庁 タックスアンサー No.1180 扶養控除 扶養親族に該当する人の範囲
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180.htm

 

●6親等内の血族および3親等内の姻族

親族とは、(1)6親等内の血族、(2)配偶者、(3)3親等内の姻族をいいます。
ただし、配偶者は所得税法上の扶養親族からは除かれます。

図表で示すと次のようになります。

出典:国税庁 タックスアンサー No.1180 扶養控除 「親族」の範囲
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180_qa.htm#q8

 

●「生計を一にする」の意義

「生計を一にする」とは、必ずしも同居を要件とするものではありません。例えば、勤務、修学、療養等の都合上別居している場合であっても、余暇には起居を共にすることを常例としている場合や、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合には、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。

なお、親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。

出典:国税庁 タックスアンサー No.1180 扶養控除 「生計を一にする」の意義
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180_qa.htm#q1

 

●扶養親族に該当する人の範囲

控除対象扶養親族とは、扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が16歳以上の人をいいます。

ただし、令和5年分以後の所得税においては、非居住者である扶養親族については、次に掲げるいずれかに該当する人に限り、控除対象扶養親族に該当します。

①その年12月31日現在の年齢が16歳以上30歳未満の人②その年12月31日現在の年齢が70歳以上の人

③その年12月31日現在の年齢が30歳以上70歳未満の人であって次に掲げるいずれかに該当する人

イ 留学により国内に住所および居所を有しなくなった人

ロ 障害者である人

ハ 納税者からその年において生活費または教育費に充てるための支払を38万円以上受けている人

出典:国税庁 タックスアンサー No.1180 扶養控除 控除対象扶養親族に該当する人の範囲
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180.htm

 

扶養控除とは

「控除」という言葉の意味は単純で、「差し引く」ということにすぎません。この「控除」があって、多ければ多いほど、納税額が減ることになります。

そして、納税額を減らせる控除には、「所得控除」と「税額控除」があります。
「所得控除」は、課税対象となる所得金額からの控除です。
「税額控除」は、税金から直接控除するものです。

納税者本人に、所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合には、一定の金額の所得控除が受けられます。これを扶養控除といいます。

 

●一般の扶養親族

その年の12月31日時点で、16歳以上18歳以下または23歳以上70歳未満の扶養親族は、一般の扶養親族となり控除額は38万円です。

 

●特定扶養親族

その年の12月31日時点で、19歳以上23歳未満の扶養親族は、特定扶養親族となり控除額は63万円です。

 

●老人扶養親族

その年の12月31日時点で、70歳以上の扶養親族は、一般の扶養控除38万円に「老人扶養控除」が加算され、控除額は48万円です。

さらに、同居を常としている「同居老親等」に該当すれば、控除額は58万円です。ただし、納税者本人または配偶者の直系尊属であることが要件となります。

 

扶養控除と他の控除との違い

扶養控除と混同されやすいものに、次の4つの控除があります。

 

●配偶者控除・配偶者特別控除

配偶者特別控除も控除の一種です。しかし、配偶者がいれば、必ずこの控除を受けられるというわけではありません。配偶者の所得によって、配偶者控除や配偶者特別控除が受けられたり、どちらの控除も受けられなかったりします。

 

●配偶者特別控除とは

配偶者特別控除とは、配偶者に48万円を超える所得があるため、配偶者控除の適用が受けられないときでも、配偶者の所得金額に応じて、一定の金額の所得控除が受けられる場合をいいます。

配偶者の所得が、配偶者控除を受けられる基準額を超えていても、大きく超えていなければ、配偶者の所得金額に応じて段階的な控除が受けられるしくみです。

 

●配偶者特別控除と配偶者控除の違い

納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合には、一定の金額の所得控除が受けられます。これを配偶者控除といいます。

控除額は、控除を受ける納税者本人の合計所得金額、および控除対象配偶者の年齢により次の表のとおりになります。

なお、老人控除対象配偶者とは、控除対象配偶者のうち、その年の12月31日現在で年齢が70歳以上の方をいいます。

控除を受ける納税者本人の 

合計所得金額 

控除額 
一般の控除対象配偶者  老人控除対象配偶者 
900万円以下  38万円  48万円 
900万円超950万円以下  26万円  32万円 
950万円超1,000万円以下  13万円  16万円 

 

配偶者が障害者の場合には、配偶者控除の他に障害者控除27万円(特別障害者の場合は40万円、同居特別障害者の場合は75万円)が控除できます。

配偶者控除の適用がない方で、納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下であり、かつ、配偶者の合計所得金額が48万円超133万円以下である方については、配偶者特別控除の適用を受けることができます。

また、配偶者特別控除額は最高で38万円ですが、配偶者特別控除の適用を受ける納税者本人の合計所得金額および配偶者の合計所得金額に応じて異なります。

参考:国税庁 タックスアンサー No.1191 配偶者控除
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1191.htm

 

●配偶者特別控除の計算方法

配偶者特別控除の控除額は、控除を受ける納税者本人のその年における合計所得金額および配偶者の合計所得金額に応じて次の表のようになります。

  控除を受ける納税者本人の合計所得金額 
900万円以下  900万円超
950万円以下 
950万円超
1,000万円以下 









 
48万円超 95万円以下  38万円  26万円  13万円 
95万円超 100万円以下  36万円  24万円  12万円 
100万円超 105万円以下  31万円  21万円  11万円 
105万円超 110万円以下  26万円  18万円  9万円 
110万円超 115万円以下  21万円  14万円  7万円 
115万円超 120万円以下  16万円  11万円  6万円 
120万円超 125万円以下  11万円  8万円  4万円 
125万円超 130万円以下  6万円  4万円  2万円 
130万円超 133万円以下  3万円  2万円  1万円 

参考:国税庁 タックスアンサー No.1195 配偶者特別控除
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1195.htm

 

●勤労学生控除

納税者自身が勤労学生であるときは、27万円の所得控除を受けることができます。これを勤労学生控除といいます。

勤労学生とは、その年の12月31日の現況で、次の(1)~(3)の要件のすべてに当てはまる人です。

(1)給与所得などの勤労による所得があること

(2)合計所得金額が75万円以下(令和元年分以前は65万円以下)で、しかも、勤労所得などの勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下であること

 

例えば、給与所得だけの人の場合は、給与の収入金額が130万円以下であれば給与所得控除55万円を差し引くと所得金額が75万円以下となります(令和元年分以前は、給与の収入金額が130万円以下であれば給与所得控除65万円を差し引くと所得金額が65万円以下となります。)。

(3)特定の学校の学生、生徒であること

 

この場合の特定の学校とは、次のいずれかの学校です。

イ 学校教育法に規定する小学校、中学校、高等学校、大学、高等専門学校など

ロ 国、地方公共団体、私立学校法の第3条に規定する学校法人、同法第64条第4項に規定する法人、これらに準ずる一定の者により設置された専修学校または各種学校のうち一定の課程を履修させるもの

ハ 職業能力開発促進法の規定による認定職業訓練を行う職業訓練法人で一定の課程を履修させるもの

 

以上のいずれかの学校に当てはまるかどうか分からないときは、通学している学校の窓口で確認するのが近道です。

参考:国税庁 タックスアンサー No.1175 勤労学生控除
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1175.htm

 

●寡婦控除

納税者自身が寡婦であるときは、27万円の所得控除を受けることができます。これを寡婦控除といいます。

寡婦とは、原則としてその年の12月31日の現況で、「ひとり親」に該当せず、次のいずれかに当てはまる人です。納税者と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいる場合は対象となりません。

 

(1)夫と離婚した後婚姻をしておらず、扶養親族がいる人で、合計所得金額が500万円以下の人

(2)夫と死別した後婚姻をしていない人または夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人この場合は、扶養親族の要件はありません。

 

なお、上記の中の「夫」とは、民法上の婚姻関係にある人をいいます。

参考:国税庁 タックスアンサー No.1170 寡婦控除
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1170.htm

 

●寡夫控除、ひとり親控除

納税者がひとり親であるときは、35万円の所得控除を受けることができます。これをひとり親控除といいます。

納税者自身が寡夫であるときは、一定の金額の所得控除を受けることができます。これを寡夫控除と呼んでいましたが、令和2年分から、ひとり親控除に含まれることになりました。

ひとり親とは、原則としてその年の12月31日の現況で、婚姻をしていないことまたは配偶者の生死の明らかでない一定の人のうち、次の3つの要件のすべてに当てはまる人です。

 

(1)その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいないこと。

(2)生計を一にする子がいること。

この場合の子は、その年分の総所得金額等が48万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない人に限られます。

(3)合計所得金額が500万円以下であること。

参考:国税庁 タックスアンサー No.1171 ひとり親控除
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1171.htm

 

扶養控除を受けるための手続

大部分の給与所得者は、給与の支払者が行う年末調整によって所得税額が確定し、納税も完了しますから、確定申告の必要はありません。

しかし、給与所得者であっても一定の条件に当てはまる人は、確定申告をしなければなりません。

確定申告をすれば税金が還付される人も、基本的には確定申告を行うことになります。

 

●年末調整での控除方法

従業員が、年末調整で扶養控除を受けるには、会社に「給与所得者の扶養控除等(異動) 申告書」を提出します。

年末調整では、扶養家族の人数などにより控除額が異なります。

従業員自身と扶養している配偶者や親族の氏名、生年月日、住んでいる市町村名、会社名、マイナンバーなどの情報を記載してもらいます。

従業員から記載方法について問合せがあった場合は、国税庁の《記載例》令和5年分扶養控除等申告書を参照してもらうか、これを参照しながら説明すると良いでしょう。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/pdf/r5bun_02.pdf

 

●確定申告での控除方法

確定申告の期間は、原則として、その年の翌年2月16日から3月15日までです。申告期限までに、確定申告書を提出します。

国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」では、画面の案内に沿って金額を入力することにより、従業員が自宅等で確定申告書等の作成・提出ができます。必要な付表や明細書も、入力することで自動的に作成されます。

 

扶養控除を受けるには、第二表の「配偶者や親族に関する事項」欄に、親族の名前等の情報を入力し、控除額を第一表の左下の「扶養控除」欄に合計を入力します。

参考:国税庁 確定申告書等作成コーナー
https://www.keisan.nta.go.jp/kyoutu/ky/sm/top#bsctrl

 

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年末調整業務のスケジュールはタイトなものです。税務署や市町村への書類の提出や源泉所得税の納付は待ったなしです。一方で、従業員からは扶養控除を受けるのに必要な「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」などの回収が進まずに焦ってしまうことがあるでしょう。

しかも、年末調整業務だけに専念できるわけではなく、他の業務と並行して行う必要があります。紙ベースでの手作業では効率が上がりません。その一部でも電子化すれば業務効率が向上することは明らかでしょう。さらに、広範囲で一括して電子化を進めてこそ、生産性の向上が期待できるのです。

 

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STEP1 従業員が基本情報を入力

従業員ごとにマイページを発行。従業員は基本情報を入力していくだけで、提出ができます。

 

STEP2 人事・労務が登録情報を確認

従業員が入力した情報の確認を行います。不備や未提出のステータスの絞り込みや一斉修正依頼メールの送信が可能です

 

STEP3 人事・労務が承認

入力内容が確認出来たら、承認ボタンを押して完了

 

細かなデータの確認や源泉徴収票の自動作成ができ、提出も電子申告が可能です。自動計算だけではなく、源泉徴収票、給与支払報告書などその他の業務はDayforceが対応するため、従来の年末調整とは比較にならない効率化が可能になります。

 

2024年2月22日

社会保険労務士 柳田 恵一

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