口頭による解雇通知が危険だとされる理由
<日常用語としての「解雇」>
会社が従業員を解雇した、あるいは、従業員が会社から解雇されたという場合、法的には従業員の意思によらず、会社が一方的に労働契約を解除したことを意味します。
労働契約について、解除の効力が生じていれば、これはまさに「解雇した」「解雇された」ということになります。
しかし、日常用語で解雇したというのは、解雇の予告を意味することが多いでしょう。
「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない(労働基準法第20条第1項本文)」という規定がありますから、30日以上前に予告することが多いのです。
「但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない(労働基準法第20条第1項但書)」などの例外はあります。
どちらの場合でも、会社が従業員に解雇通知書を交付すれば、その時点で「解雇した」という言い方をしますし、解雇通知書を交付された従業員は「解雇された」と言います。
ここでの「解雇」は、まさに日常用語としての「解雇」です。
<解雇通知書の内容>
解雇通知書の中心となる内容は次の3つです。
・解雇を予告した日付
・解雇の理由(通常は「就業規則第◯条、第◯条による」という記載)
・労働契約の最終日(「◯年◯月◯日をもって解雇する」という記載)
基本的には、対象者に直接交付します。
あらかじめコピーをとっておき、コピーの方に本人の署名と受領日を記載してもらって会社で保管します。
<口頭による解雇通知のリスク>
口頭で解雇を通知した場合には、いつ予告したのか、解雇の理由をどのように説明したのか、いつをもって労働契約が終了することになっているのかについて、証拠が残っていません。
対象者から次のような主張をされた場合には、否定する根拠に乏しいことになります。
・退職を申し出ていない
・解雇された覚えはない
・解雇される理由はなく明らかに不当解雇である
・解雇予告手当の支払を求める
・慰謝料を請求する
会社としては、本人が了解しているつもりで、離職票などを郵送したり、健康保険証などの返却を求めたりしたところ、このような対応をとられたのでは、大いに困惑します。
<実務の視点から>
本部や親会社では、口頭での解雇通知など想定できないでしょう。
しかし、現場や子会社では、感情的になった責任者が口頭で解雇を言い渡してしまうことがあるかもしれません。
管理職に対しては、口頭での解雇通知を禁止し、研修などで重ねて確認しておくことも必要です。
また、就業規則や労働条件通知書などには、解雇通知は必ず書面で行う旨を明示し、従業員には採用の時点で説明しておくことをお勧めします。
2024年9月18日
社会保険労務士 柳田 恵一
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