リソースページへ戻る

労働者のハラスメント防止義務

人事情報お役立ちブログ(毎週更新) 人事管理関連

<ハラスメント防止責務規定>

職場でのハラスメント防止というと、企業の義務というイメージが強く、労働者は守られる立場にあるという認識が一般的でしょう。 

令和元年の法改正により、職場におけるパワーハラスメントやセクシュアルハラスメント及び妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントを防止するために、職場におけるハラスメントの防止のために、法及び指針において、事業主や労働者に対して、主に以下の事項について努めることとする責務規定が定められました。 

 

<事業主の責務>

1) 職場におけるハラスメントを行ってはならないことその他職場におけるハラスメントに起因する問題に対する自社の労働者の関心と理解を深めること 

2) 自社の労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修その他の必要な配慮をすること 

3) 事業主自身(法人の場合はその役員)が、ハラスメント問題に関する理解と関心を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うこと 

※ここでいう「労働者」には、取引先等の他の事業主が雇用する労働者や、求職者も含まれます。 

 

<労働者の責務>

1) ハラスメント問題に関する理解と関心を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うこと 

2) 事業主の講ずる雇用管理上の措置に協力すること 

 

<ハラスメント防止の責任>

職場におけるハラスメントは、個人としての尊厳や人格を不当に傷つける、行ってはならない弱い者いじめです。 

これに起因して、労働者の意欲の低下等による職場環境の悪化や職場全体の生産性の低下、労働者の健康状態の悪化、休職や退職等につながり得ること、これらに伴う経営的な損失等様々なものがあります。 

こうした損失から会社を守るため、事業主がハラスメント防止に取り組むのは、責務と言われるまでもなく当然のことでしょう。 

一方で、ハラスメントは、事業主自身が行う場合よりも、労働者間で発生する場合の方が、圧倒的に多いという現実があります。労働者も、何がハラスメントに当たるのかを正しく理解し、発生の防止に努めなければならないということを強く認識しなければなりません。 

 

<パワハラ防止法の規定>

パワハラ防止法の正式名称は、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」といい、「労働施策総合推進法」というのが一般的な略称です。 

この法律の中にも、国の責務に加えて、事業主や労働者の責務が次のように規定されています。 

 

【国、事業主及び労働者の責務】 

第三十条の三 国は、労働者の就業環境を害する前条第一項に規定する言動を行ってはならないことその他当該言動に起因する問題(以下この条において「優越的言動問題」という。)に対する事業主その他国民一般の関心と理解を深めるため、広報活動、啓発活動その他の措置を講ずるように努めなければならない。 

2 事業主は、優越的言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる前項の措置に協力するように努めなければならない。 

3 事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)は、自らも、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならない。 

4 労働者は、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる前条第一項の措置に協力するように努めなければならない。 

 

2024年6月28日

社会保険労務士 柳田 恵一

給与・勤怠・労務システムに関するご相談はこちら