緊急時の時間外・休日労働
<緊急時の時間外・休日労働と労働基準法>
時間外労働や休日労働の上限規制については、働き方改革関連法による改正後の労働基準法により法定化され、平成31(2019)年4月1日から施行されています(中小企業は令和2(2020)年4月1日から)。
しかし、労働基準法第33条第1項の「災害その他避けることのできない事由」に該当する場合には、労働基準監督署長に許可申請等を行うことにより、労働基準法や三六協定で定める限度とは別に時間外・休日労働を行わせることができます。その場合、時間外労働の上限規制はかかりません。
ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければなりません。
<許可基準(令和元年6月7日付け基監発0607第1号通達)の概要>
つぎに、概要を厚生労働省の『建設業時間外労働の上限規制わかりやすい解説』から引用しておきます。
- 付随する業務
許可の対象には、災害その他避けることのできない事由に直接対応する場合に加えて、当該事由に対応するに当たり、必要不可欠に付随する業務を行う場合が含まれる。
具体的には、例えば、事業場の総務部門において、当該事由に対応する労働者の利用に供するための食事や寝具の準備をする場合や、当該事由の対応のために必要な事業場の体制の構築に対応する場合等が含まれる。
- 雪害
「雪害」については、道路交通の確保等人命又は公益を保護するために除雪作業を行う臨時の必要がある場合が該当する。具体的には、例えば、安全で円滑な道路交通の確保ができないことにより通常の社会生活の停滞を招くおそれがあり、国や地方公共団体等からの要請やあらかじめ定められた条件を満たした場合に、除雪を行うこととした契約等に基づき除雪作業を行う場合や、人命への危険がある場合に住宅等の除雪を行う場合のほか、降雪により交通等の社会生活への重大な影響が予測される状況において、予防的に対応する場合が含まれる。
- ライフライン
「ライフライン」には、電話回線やインターネット回線等の通信手段が含まれる。
- 許可基準の例示性
許可基準に定めた事項はあくまでも例示であり、限定列挙ではなく、これら以外の事案についても「災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合」となることもあり得る。
例えば、「他の事業場からの協力要請に応じる場合」について、国や地方公共団体からの要請も含まれる。そのため、例えば、災害発生時において、国の依頼を受けて避難所避難者へ物資を緊急輸送する業務が含まれる。
<許可基準の注意点>
この通達は、従来の通達が改正されたもので、拡大解釈・類推解釈をしてはならない旨の注意を促しています。
・労働基準法第33条第1項は、災害、緊急、不可抗力その他客観的に避けることのできない場合の規定であるからその臨時の必要の限度において厳格に運用すべきものであること。
・単なる業務の繁忙その他これに準ずる経営上の必要は認めないこと。 ・地震、津波、風水害、雪害、爆発、火災等の災害への対応(差し迫った恐れがある場合における事前の対応を含む。)、急病への対応その他の人命又は公益を保護するための必要は認めること。 ・事業の運営を不可能ならしめるような突発的な機械・設備の故障の修理、保安やシステム障害の復旧は認めるが、通常予見される部分的な修理、定期的な保安は認めないこと。 |
<実務の視点から>
労働基準監督署長の許可は、通達に示された許可基準に従って行われますので、企業独自の解釈ではなく、通達により判断する必要があります。
また、可能な限り、事前に労働基準監督署に確認しておくことが望ましいといえます。
2024年5月3日
社会保険労務士 柳田 恵一
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