リソースページへ戻る

複数企業での社会保険加入

人事情報お役立ちブログ(毎週更新) 勤怠・就業管理関連

<限定されていた複数企業での社会保険加入>

かつては、フルタイム労働者か、これに近い労働条件で働いている人だけが社会保険に入るものとされていました。

具体的には、正社員などフルタイム労働者の4分の3以上の勤務日数、勤務時間の従業員だけが社会保険に加入していました。

この条件下では、複数の企業で社会保険に加入するのは、関連企業で役員を兼務している人など、ごくわずかな人数に限られていました。

 

<年金制度改革の方向性>

「労働者として働く人には社会保険を適用する」というのが、今後の年金制度改革の基本的な方向性として示されています。

このため、社会保険加入基準が見直されて、より多くの労働者が加入者(被保険者)になっていくように、法改正が重ねられています。

 

<社会保険の適用拡大>

平成28(2016)年10月から、従来の基準での社会保険加入者が500人を超える企業は、特定適用事業所とされました。

特定適用事業所では、週所定労働時間が20時間以上で、賃金の月額が8万8千円以上であり、学生でないなどの条件を満たせば、社会保険の加入者となります。

そして、上記の「500人」という基準が、令和4(2022)年10月から100人となりました。

さらに、令和6(2024)年10月からは50人に変更されます。

 

<ダブルワークの社会保険>

こうした法改正により、ダブルワークの場合、2つの企業でどちらも週所定労働時間が20時間以上であれば、両方の企業で社会保険に加入するケースも増えています。

こうした場合には、社会保険の手続きを行う「主たる事業所」を選択するため、「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を提出します。

以後は、選択した事業所の所轄年金事務所が年金の事務を行い、選択された保険者が健康保険の事務を行います。

健康保険証は、「主たる事業所」のものだけが有効となります。

保険料については、両方の事業所の給与を合算して標準報酬月額を算出し、それを各事業所の給与額に応じた比率で按分し、それぞれの事業所が納付します。

 

<実務の視点から>

ダブルワークについては、時間外割増賃金の計算に加えて、社会保険の手続きや保険料の納付の点で特有のわずらわしさが発生することがあります。

しかし、今後の人手不足や社会保険の適用拡大を考えると、ダブルワークの採用に消極的になるのではなく、手続きに慣れていくことが求められているといえるでしょう。

 

2023年2月24日

社会保険労務士 柳田 恵一

 

給与・勤怠・労務システムに関するご相談はこちら