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全く残業のない職場でも就業規則に時間外割増賃金の規定は必要なのか?

人事情報お役立ちブログ(毎週更新) 勤怠・就業管理関連

<残業のない職場>

長時間労働が解消できない職場から見たら、全く残業のない職場は理想ともいえる羨ましい状態です。 

法定時間外労働や法定休日労働が全く予想されない職場では、三六協定届を所轄の労働基準監督署長に提出していないこともあります。 

しかし、たとえわずかでも発生しうるのであれば、提出しておく必要があります。 

 

<就業規則の規定>

賃金の計算方法が、就業規則の絶対的必要記載事項であることから、ほとんどの企業では、法定時間外労働や法定休日労働が発生した場合の、割増賃金の計算方法についての規定が置かれています。 

しかし、法定時間外労働や法定休日労働が全く予想されない職場では、割増賃金についての規定は、せいぜい深夜労働についてのみで足りることになります。 

 

<就業規則についての迷い>

就業規則の中に、割増賃金の計算方法の規定が、深夜労働についてのものしかないと、労働基準監督署に見られたときに、何らかの指摘を受けるのではないかと不安に思います。 

かといって、法定時間外労働や法定休日労働が発生した場合の、割増賃金の計算方法についての規定を置くと、三六協定届を提出していないことと矛盾するのではないか、この矛盾を労働基準監督署から指摘されるのではないかという不安を抱いたりもします。 

こうした事情から、残業のない職場であっても、就業規則に割増賃金の規定を揃え、所轄の労働基準監督署に三六協定届を提出していることがあります。 

 

<三六協定がなくても可能な残業>

労働基準法第33条第1項には、次の規定があります。 

(災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等) 

第三十三条 災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合においては、使用者は、行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において第三十二条から前条まで若しくは第四十条の労働時間を延長し、又は第三十五条の休日に労働させることができる。ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならない。 

 

たとえ、法定時間外労働や法定休日労働の実績が全くなく、想定されない職場であったとしても、災害発生時には思わぬ残業が発生するかもしれません。 

この場合に、賃金を割増で支払うことは、労働基準法によって義務づけられていますので、これに備えて割増賃金の計算方法についての規定が、全く必要ないとはいえないことになります。 

また、災害発生時には、三六協定届の提出をしていなくても、行政官庁の許可を受けて、法定時間外労働や法定休日労働も可能ではあります。ここで、「行政官庁」とは、労働基準監督署長を指しています。 

念の為に、三六協定届を提出しておけば、災害発生時に労働基準監督署長の許可を受けなくても、三六協定の範囲内で法定時間外労働や法定休日労働が可能です。 

 

<実務の視点から>

法定時間外労働や法定休日労働の実績が全くなく、想定されない職場であっても、就業規則に割増賃金についての規定を揃え、毎年、三六協定届を所轄の労働基準監督署長に提出しておくことで、万一の災害時に困らなくて済むでしょう。 

自然災害は、世界的に発生が増えていますので、念の為の手続を行っておくことをお勧めします。 

 

2024年11月27日

社会保険労務士 柳田 恵一

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