欠勤にもいろいろ事情がある
<無断欠勤を懲戒の対象とする規定>
端的に無断欠勤を懲戒の対象とする就業規則があります。
しかし、欠勤することについて、事前に連絡を入れることができない正当な理由があれば、実際には懲戒の対象とはしない運用となっているでしょう。
稀な例ですが、出勤の途中で車に轢かれ、その場で意識を失ったまま救急車で病院に搬送されたような場合、家族などが連絡を受け、気を利かせて職場に連絡すればともかく、駆けつけた家族が職場の連絡先を知らないこともあり、やむを得ず無断欠勤となってしまうこともあります。
こうしたことを想定すると、「正当な理由なく無断欠勤」した場合に、懲戒の対象とする規定が正しいことになります。
<連絡が遅い場合>
始業時刻を3時間も過ぎてから「すみません寝坊しました」という連絡があれば、欠勤控除はするものの、残業続きの場合など、笑って許せることもあるでしょう。
しかし、当日の朝になってから「今日は兄の結婚式なので休みます」などという連絡があれば、欠勤の理由は正当であっても、連絡が遅いことは非難に値します。
こうした場合であっても、無断欠勤にはなりません。
それでも連絡が遅いことによって、業務に支障が生じうる行為ですから、別途、就業規則で「欠勤する場合には、その必要性が判明次第、連絡を入れること」を義務付け、この義務に違反することを懲戒の対象とすることによって、対応することになります。
あるいは、より広く「報告・連絡・相談は可能な限り速やかに行うこと」という義務規定と、違反に対する懲戒規定を置くことも考えられます。
<うそをついて欠勤>
かなり前もって、会社に連絡を入れてあったとしても、それが虚偽の理由であれば、無断欠勤ではないにしても、虚偽の報告・連絡と正当な理由のない欠勤となり、二重にいけないことをしています。
年次有給休暇があれば、理由を告げることなく休めるのですが、入社直後で年次有給休暇が付与されていなかったり、使い果たしたりしていれば、うそをついて欠勤することもありえます。
こうしたことに対処するため、「正当な理由なく無断欠勤」「虚偽の報告・連絡・相談」の両方に規定が必要となります。
<懲戒の対象となる欠勤>
結局のところ、偽りなく速やかな事前連絡のあった欠勤と、事前連絡ができなかったことについて正当な理由があり、事後の速やかな報告があった場合を除き、就業規則で懲戒の対象と定めておけば、幅広く対処できることになります。
しかし、なんとなく「世間一般の常識から考えて許されない欠勤だ」と考えて、懲戒規定もないのに懲戒の対象とすることはできません。
従業員が、具体的に予測できない理由で、懲戒処分の対象とされたのでは、人権侵害も甚だしいからです。
欠勤一つをとっても、具体的なシーンをよく考えたうえで、懲戒規定を定めておく必要があるのです。
2025年2月19日
社会保険労務士 柳田 恵一
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