【監修付き】給与計算の基礎を初心者向けに徹底解説
<給与計算の基礎知識>
給与計算は、企業に不可欠な業務ですが、単純な計算で終わることのない複雑な業務でもあります。しかも、ちょっとしたミスが、労務トラブルにつながることすらあります。これは、給与計算担当者が社会保険、税務、労働法などの幅広い基本知識を習得することで、ある程度、防止することができます。
さて給与計算は、基本的には次の計算式で示すことができます。
総支給額 - 控除額 = 差引支給額 |
- 総支給額
基本給に残業代などの各種手当を加えた金額で、何も差し引かれていない(控除されていない)給与の合計額をいいます。
- 控除額
総支給額から差し引かれる税金や社会保険料などのことをいいます。企業によっては、組合費や旅行積立金などもここに含まれることがあります。なお、控除することを、「天引き(てんびき)」ということもあります。
- 差引支給額
従業員の銀行口座に振り込むなどによって、実際に支給される金額のことです。「手取り額」「手取り」ということもあります。
<給与計算の方法>
毎月の給与計算は、次の4STEPで行います。
- STEP1 勤怠データの確認
従業員ひとり一人の残業(時間外労働)や休日労働、欠勤・遅刻・早退、年次有給休暇などを確認します。
- STEP2 総支給額の計算
総支給額は、次の計算式によって求められます。
基本給 + 各種手当 - 欠勤控除 |
- STEP3 控除額の計算
健康保険料・厚生年金保険料などの社会保険料、所得税・住民税などの税金、その他の控除額を計算します。
- STEP4 差引支給額の決定
差引支給額は、給与計算の最終到達点であり、最初にご紹介した次の計算式によって求められます。
総支給額 - 控除額 = 差引支給額 |
それではSTEPごとに、具体的な内容を確認していきましょう。
<STEP1 勤怠データの確認>
各営業所・各店舗などから、勤怠の集計表とタイムカードなどを回収したり、届けてもらったりして、従業員ひとり一人の出勤日・休日・休暇、残業(時間外労働)や休日労働、欠勤・遅刻・早退などを確認します。企業によっては、この作業が、ある程度自動化されていることもあります。
また、必ずしも毎月確認するものではありませんが、各従業員の基本給や各種手当など個人データに変更がないかチェックしておく必要があります。人事異動があれば、就業規則や賃金規程なども参考にして、間違いなく変更をかけておく必要があります。毎年、決まった時期に人事異動が行われる企業では、この作業が膨大となることもあります。
<STEP2 総支給額の計算>
総支給額は次の計算式であらわされます。
総支給額 = 基準内給与 + 基準外給与 |
基準内給与は、基準となる就業規則や給与規程によって定められているため、変動がないことになります。もっとも、パート・アルバイトであれば、時給と勤務時間を掛け合わせたものになりますから、勤務時間によって金額に変動があります。正社員であれば諸手当を含め定額となります。
これに対して、基準外給与は毎月変動します。 時間外手当については、所定労働時間を超え、法定労働時間までは残業時間×1時間あたりの賃金の計算式で算出します。一方、法定労働時間を超える部分については、残業時間×1時間あたりの賃金×割増率の計算式で算出します。ここは、ある程度、給与計算に慣れた人でも戸惑うことがあるポイントです。
法定時間外労働は25%増し、ただし月60時間以上なら50%増し、深夜労働が25%増し、法定休日労働が35%増しが最低基準です。実際の割増率は、就業規則の規定によります。
<STEP3 控除額の計算>
控除額で代表的なものには、保険料と税金があります。
- 保険料の控除額
社会保険料と雇用保険料は、それぞれ次の計算式によって求められます。
社会保険料 = 標準報酬月額 × 保険料率
雇用保険料 = 総支給額 × 保険料率 |
これらには、企業の負担分と従業員の負担分があり、当然ですが、保険料の控除は従業員の負担分についてのみ行います。
- 税金の控除額
住民税は、区市町村から企業に税額の決定通知書が送付され、企業はこれによって控除額を確認します。
一方、所得税は次の計算手順によって求められます。
1.給与所得 = 給与収入 - 非課税の手当 - 給与所得控除
2.課税所得 = 給与所得 - 所得控除 3.所得税額 = 課税所得 × 税率 - 控除額 |
※詳しくは、「【監修付き】給与計算での所得税の計算方法は?税率や控除そして気をつけるポイントも」をご参照ください。
<STEP4 差引支給額の決定>
最後に手取りとなる差引支給額の計算です。
差引支給額は、給与計算の最終到達点であり、最初にご紹介した次の計算式によって求められます。
総支給額 - 控除額 = 差引支給額 |
これで従業員の手取りとなる、金融機関への振込額が確定されます。
<給与計算の控除の種類>
「控除」の意味は簡単で、「差し引く」ということにすぎません。
しかし、納税額を減らせる控除には、「所得控除」と「税額控除」があります。
「所得控除」は、課税対象となる所得金額からの控除です。
「税額控除」は、税金から直接控除するものです。
ここの部分に、すでに勘違いがあれば、給与計算がうまくいきません。
また、所得控除には、企業で対応できるものが12種類、対応できないものが3種類あります。企業で対応できないものは、従業員が確定申告を行う必要があります。種類が多いため、見落としや勘違いが生じやすいのです。
<給与計算で気を付けるべきこと>
給与計算は、誰がやっても結果は同じはずです。つまり、正解はただ一つであって、それ以外は不正解ということになります。それでも、人間がやることですから、ミスは避けられません。その原因を、いくつか見てみましょう。
- 勤怠データや個人データが給与計算に正しく反映できていない
現場から届いた集計表とタイムカードの食い違いがあれば、これは現場のミスではありますが、給与計算をする側で再チェックしなければなりません。また、現場から届いた勤怠データは正しいのに、読み間違いや入力ミスが発生することもあります。
個人データの変更に気付かず、あるいは誤った変更をかけてしまうと、給与計算の結果は間違ったものとなってしまいます。大人数の人事異動があれば特に慎重に確認しましょう。また、人事異動がなくても、物価上昇に対応してのベースアップや、転居による通勤手当の変更などにも注意が必要です。
- 計算ミス
Excelなどの表計算ソフトを使って給与計算を行っている場合には、そもそも誤った関数を組んでしまうと、多数の従業員に誤った給与計算結果を発生させてしまいます。また、関数が正しくても、入力ミスはゼロにはできないでしょう。
給与計算は、正しくて当たり前という面がありますから、どうしても緊張を強いられます。不慣れな担当者であれば、緊張の中、集中力を維持するのは大変なことです。ここに、計算ソフトを導入する最も基本的なメリットがあるといえるでしょう。
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給与計算を手作業で行う部分があれば、給与計算担当者は大変な緊張感のもと業務をこなしていても、どうしても人為的なミス(ヒューマンエラー)が発生してしまいます。
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2023年8月18日
社会保険労務士 柳田 恵一
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