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勘違いされている点が多すぎる現在の雇用保険制度

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<雇用保険法の成立>

昭和22(1947)年に制定された失業保険法に代わり、昭和49(1974)年に雇用保険法が制定されました。 

雇用保険法に変わったのは、もう50年も前のことですが、今でも「失業保険」という言葉が当たり前に使われていますし、「失業保険」と聞けば「雇用保険」のことを指していると理解されます。 

 

<雇用保険の目的>

雇用保険の目的について、雇用保険法の第1条は次のように定めています。 

雇用保険は、労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行うほか、労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合及び労働者が子を養育するための休業をした場合に必要な給付を行うことにより、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに、求職活動を容易にする等その就職を促進し、あわせて、労働者の職業の安定に資するため、失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進を図ることを目的とする。 

 

この規定から、失業した労働者に必要な給付を行うのは、雇用保険の目的の一部に過ぎないことが分かります。 

だからこそ、失業保険ではなく雇用保険と呼ぶのがふさわしいといえます。 

 

<ハローワークのサービス>

職業紹介や求人情報の提供は、失業保険の時代から行われているサービスです。 

この他、職業相談の窓口では、専門スタッフによる求人内容の詳細な情報の提供、応募状況の確認、キャリア・コンサルタントなどによる、求職活動のサポートなどを行っています。 

さらに完全予約制で、マンツーマンによる履歴書・職務経歴書の作成方法や面接の受け方などの就職支援等も実施しています。 

 

<基本手当の給付日数>

65歳未満で離職した雇用保険加入者(一般被保険者)に対する基本手当(昔の失業手当)は、離職時等の年齢や、雇用保険の加入期間のうちカウント対象となる期間(算定基礎期間)の他、次の区分によって所定給付日数(基本手当が支給される日数)が異なります。 

定年・自己都合退職、懲戒解雇、契約期間満了 

障害者等の就職困難者 

特定受給資格者・一部の特定理由離職者 

 

<会社都合という区分>

上の区分で分かるように、雇用保険では自己都合退職はあっても、会社都合退職という区分はありません。 

自分の意思による計画的な退職であれば、退職後しばらくの間の生活費などは、自分で考えて準備しておくべきです。 

しかし、突然の退職となってしまい、準備できていなかった場合には、雇用保険による手厚い保護が必要となります。 

現在の雇用保険では、この考え方による区分をしていますので、自己都合・会社都合という大雑把な区分ではないのです。 

会社の退職金規程であれば、今でも自己都合・会社都合の区分が一般的ですし、区分の基準も規程の内容に従うことになりますが、これとは考え方が異なります。 

 

<特定受給資格者>

特定受給資格者とは、離職理由が、倒産・解雇等により再就職の準備をする時間的余裕なく離職を余儀なくされた受給資格者です。 

 

<特定理由離職者>

特定理由離職者とは、特定受給資格者以外の者であって、期間の定めのある労働契約が更新されなかったこと、その他やむを得ない理由により離職した人です。 

 

【契約の不更新】 

期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、その労働契約の更新がないことにより離職した人(その者が更新を希望したにもかかわらず、更新についての合意が成立するに至らなかった場合に限る。)が対象です。 

労働契約で、契約更新条項が「契約を更新する場合がある」とされている場合など、契約の更新について明示があるが、契約更新の確約がない場合がこの基準に該当します。 

 

【正当な理由のある自己都合により離職した者】 

次のような場合が該当します。 

・体力の不足、心身の障害、疾病、負傷等により離職した者 

・妊娠、出産、育児等により離職し、受給期間延長の措置を受けた者 

・家庭の事情が急変したことにより離職した者(親族の介護等) 

・通勤不可能又は困難となったことにより離職した者 

・企業整備による人員整理等で希望退職に応じて離職した者(一部例外あり) 

 

<手当の支給開始>

解雇・定年等により離職した場合には、離職票を提出し、求職の申込みをしてから7日間の失業している日(待期)が経過した後に支給開始となります。 

自己都合、懲戒解雇により離職した場合には、離職票を提出し、求職の申込みをしてから7日間の失業している日(待期)+原則2か月(給付制限)が経過した後に支給開始となります。 

ただし、自己都合により離職した場合の給付制限原則2か月は、令和7(2025)年4月からは原則1か月となりますし、雇用の安定・就職の促進に必要な職業に関する教育訓練等を自ら受けた場合には、給付制限がなくなります。

2024年11月29日

社会保険労務士 柳田 恵一

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