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【監修付き】月平均所定労働時間とは?計算方法と残業時間の上限について解説します

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<月平均所定労働時間とは?>

 

月平均所定労働時間とは、1年間の所定労働時間を12か月で割ることにより算出される、1か月平均の所定労働時間です。各月の所定労働時間は、就業規則や労働契約の規定により決まります。

月平均所定労働時間は、1日の所定労働時間が固定であれば、次の計算式で算出できます。

 

( 365日 - 年間休日数 )× 1日の所定労働時間 ÷ 12か月

 

1年間の日数365日(うるう年の場合は366日)から年間休日数を引き、年間所定労働日数を算出します。年間の所定労働日数に1日の所定労働時間を掛けると1年間の所定労働時間が算出されます。これを12か月で割ると、月平均所定労働時間数が算出できるのです。

 

式の中の年間休日数は、カレンダーで青や赤で表示されている日の日数ではなく、各企業の就業規則や労働契約で定められている1年間の休日数です。これは年によって変動しますから、毎年、計算し直す必要があります。

 

また、1日の所定労働時間が日によって変動する従業員については、就業規則や労働契約の内容を確認して、次の計算式で算出することになります。

 

1年間の所定労働時間 ÷ 12か月

 

  • 実労働日数との違い

 

それぞれの従業員は、毎月の実労働日数を意識して勤務しています。「うちは正月休みが長いから、1月の実労働日数が少ない」とか、「6月は祝日がないので、実勤務日数が多い」とかいう具合です。残業や欠勤がない場合、この実労働日数が多ければ多いほど、1か月の実労働時間数も多くなります。

 

しかしこれは、いわば「予定労働日数」「予定労働時間」の話です。これらと、給与計算に使う「月平均所定労働時間」とは、全く別物と考えなければなりません。「月平均所定労働時間」は、給与計算専用の技術的な数値であって、勤務スケジュールを立てるのに重要な「実労働日数」とは、明確に区別しなければなりません。両者を、混同しないように注意しましょう。

 

  • 残業時間との関連性

 

残業には大きく分けて「法定内残業」と「法定外残業」の2種類があります。

 

「法定内残業」は、就業規則や個別の労働契約によって決められた所定労働時間を超えて勤務しているものの、労働基準法で定められた法定労働時間の範囲内で行われた残業のことです。法定内残業に対しては、通常の賃金を支払えばよく、特別に就業規則や個別の労働契約などで定められていない限り、割増賃金の支払は発生しません。

 

「法定外残業」とは、労働基準法で定められた法定労働時間(原則1日8時間、1週40時間)を超えて行われた残業のことをいいます。法定外残業に対しては、割増賃金を支払わなければなりません。

 

このように、「法定内残業」は所定労働時間が基準となり、「法定外残業」は法定労働時間が基準となります。「今月は実労働時間が多かったから、残業代も多いだろう」と期待したのに、そうでもなかったということがあります。これは、残業時間の計算が「月平均所定労働時間」を基準とするものではないからです。

残業時間の計算が、基本的に1日単位、1週単位で行われるのに対して、「月平均所定労働時間」が1か月で考えていることによるトリックともいえるでしょう。

 

<月平均所定労働時間の算出の必要性>

 

それでは、なぜ給与計算をするために、月平均所定労働時間の算出が必要となるのでしょうか。それは、残業代を計算するための前提となる「1時間あたりの基本賃金(時間単価)」を計算しなければならないからです。

また、「平均」を計算するのは、月によって「1時間あたりの基本賃金(時間単価)」が異なれば、同じ時間だけ残業しても残業代が多い月と、残業代が少ない月が発生してしまうという不合理が、発生するのを防止するためなのです。

 

上で述べた「法定内残業」の賃金の計算式は、次のようになります。

 

1時間あたりの基本賃金(時間単価)× 労働時間

 

また、「法定外残業」など割増賃金の基本的な計算方法は、次の計算式で示されます。〔労働基準法第37条第5項〕

 

1時間あたりの基本賃金(時間単価)×(1+割増率)× 労働時間

 

この中の「1時間あたりの基本賃金」は、時給制の場合には、原則として時給額そのものとなりますから簡単です。

 

しかし、月給制の場合には、計算が少し複雑となります。

 

まず、「計算の基礎となる月給」には、次のものが含まれません。〔労働基準法施行規則第21条〕

・家族手当・扶養手当・子女教育手当

(ただし、家族数によらず一定額を支給するものは月給に含まれます)

・通勤手当

(ただし、交通費や通勤距離によらず一定額を支給するものは月給に含まれます)

・別居手当・単身赴任手当

・住宅手当

(家賃やローンの有無によらず一定額を支給するものは月給に含まれます)

・臨時の手当(結婚手当、出産手当、大入り袋など)

 

そして、月給制の場合「1時間あたりの基本賃金」は、次の計算式で示されます。

 

計算の基礎となる月給 ÷ 月平均所定労働時間

 

こうして、給与計算には「月平均所定労働時間」の算出が不可欠であることが、お分かりいただけたと思います。

 

<月平均所定労働時間の計算方法>

 

それでは、あらためて「月平均所定労働時間」の計算方法を見ていきましょう。

 

  • 通常の計算方法

 

1日の所定労働時間が、勤務日によって変動しない通常の場合には、次の手順で計算することができます。

 

STEP1 1年間の所定労働日数の計算

 

1年間の所定労働日数 = 356日 - 年間休日数

 

式の中の年間休日数は、カレンダーで青や赤で表示されている日の日数ではなく、各企業の就業規則や労働契約で定められている1年間の休日数です。これは年によって変動しますから、毎年、計算し直す必要があります。

また、1年間の日数365日は、うるう年の場合は366日となります。

 

STEP2 1年間の所定労働時間の計算

 

1年間の所定労働時間 = 1年間の所定労働日数 × 1日の所定労働時間

 

STEP3 月平均所定労働時間の計算

 

月平均所定労働時間 = 1年間の所定労働時間 ÷ 12か月

 

  • 変形労働時間制の場合の計算方法

 

1日の所定労働時間が、勤務日によって変動する変型労働時間制の場合には、次のようになります。

 

・フレックスタイム制の場合

 

フレックスタイム制では、労使協定により3か月以内の「清算期間」が設けられ、その期間内で社員が労働すべき基準労働時間は、平均して1週間の労働時間が原則40時間以内とされます。

清算期間が1か月のフレックスタイム制であれば、基準労働時間がそのまま「月平均所定労働時間」となります。

清算期間が1か月を超えるフレックスタイム制の場合に、1か月毎の労働時間が週平均50時間を超えた場合には、清算期間の満了を待たず、その月の分の残業代を計算し支給しなければなりません。しかし、「月平均所定労働時間」を計算する必要はありません。

 

・裁量労働制(みなし労働時間制)の場合

 

裁量労働制は、始業と終業の時刻を各従業員に委ね、一定の時間分労働があったと「みなす」制度です。残業についても、一定の時間だけ残業があったとみなして、毎月定額の残業代を支給します。ですから、「月平均所定労働時間」を計算する必要はありません。

しかし、この場合でも、深夜労働と法定休日出勤に対する割増賃金の計算と支払は必要となります。

 

・1箇月単位の変形労働時間制の場合

 

1箇月単位の変形労働時間制は、書面による労使協定や就業規則その他これに準ずるもので定めることにより、導入できるものです。「1箇月単位の」という名称に関わらず、1か月以内の期間で設定されます。

「月平均所定労働時間」は使わず、変形期間の日々の労働時間、各週の労働時間にしたがいます。

 

・1年単位の変形労働時間制の残業代計算

 

1年単位の変形労働時間制を採用する場合には、労使協定を締結し、1箇月を超え1年以内の一定期間を平均し1週間の労働時間を40時間以下の範囲にすることなどの条件を満たしたうえで所轄労働基準監督署長に届け出ることが必要です。「1年単位の」という名称に関わらず、1か月を超え1年以内の期間で設定されます。

また、1年単位の変形労働時間制を採用する旨を就業規則に記載したうえで、これを所轄労働基準監督署長に届け出る必要があります。

「月平均所定労働時間」は使わず、対象期間の労働時間総枠が基準となります。

 

<実際の計算例>

 

それでは、具体的な計算例も見ていきましょう。

 

  • 通常の計算方法

 

1日の所定労働時間が、勤務日によって変動しない通常の場合には、次の手順で計算することができます。

 

たとえば、年間所定休日が122日で、1日の所定労働時間が8時間であれば、1年間の所定労働時間は、次の計算で求められます。

 

( 365 - 122 )× 8時間 = 1,944時間

 

この場合、月平均所定労働時間を計算すると、次のようになります。

 

1,944時間 ÷ 12か月 = 162時間

 

  • 1年単位の変形労働時間制の場合

 

「月平均所定労働時間」ではなく、対象期間の労働時間総枠が基準となります。

この対象期間の労働時間総枠を決める際に、法定労働時間の限度内にする必要があります。

たとえば、対象期間が半年(182日)の場合には、次の計算により1,040時間以内の労働時間総枠を決めることになります。

182日÷7日×40時間(法定労働時間)=1,040時間

 

  • 1箇月単位の変形労働時間制の場合

 

「月平均所定労働時間」ではなく、対象期間の労働時間総枠が基準となります。そして、この労働時間総枠も、1年単位の変形労働時間制の場合と同様に法定労働時間の限度内で定める必要があります。

 

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残業代の計算には、「月平均労働時間」が重要であることが、お分かりいただけたと思います。毎年、計算し直さなければならないというだけでも、十分に複雑だと感じる方も多いのではないでしょうか。あるいは、残業代の計算に不安を覚えた部分があったかも知れません。

 

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2023年10月20日

社会保険労務士 柳田 恵一

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