【監修付き】提出済みの年末調整を訂正する方法は?期限や再計算方法も紹介
<年末調整をやり直すパターン>
年末調整手続は、年内最後の給与支給日の状況に従って進めるのですが、厳密には、12月末日の事実関係を反映させる必要があります。このため、従業員から書類を回収した後で、12月末日までに、その従業員についての事実関係が変わったことによって、一度終了した年末調整手続を、やり直す必要が生ずることもあります。
多いのは、本人や配偶者の出産、離婚などによって、扶養家族が増減した場合です。従業員に申告書などの提出を依頼する際に、年末までに本人や配偶者の出産などによって、扶養家族に変更を生じる可能性がある場合には、この旨申し出ていただくようにするとよいでしょう。
- 扶養親族の変更
従業員が年末調整書類を提出後に、年内に結婚・出産したり、親を扶養に入れたりなどで、扶養控除や配偶者控除の修正が必要となることがあります。
16歳未満の子どもは扶養控除の対象外ですが、たとえ新生児でも、夫婦それぞれの年収が850万円を超えていれば所得金額調整控除の対象となります。また、翌年度の住民税に関わるため、新生児の情報は必要です。
反対に、子どもが独立して、扶養の対象外となる場合なども考えられます。
- 保険料控除や住宅ローン控除の修正
保険会社から控除証明書が届くのが遅れた場合、紛失したと思っていた控除証明書が見つかった場合、年末調整書類の提出後に新たに保険に加入して本年中に保険料を支払った場合などには、保険料控除の再計算が必要になります。
住宅ローン控除は2年目からは年末調整で行えますが、初年度は従業員が自分で確定申告をするため、書類の提出し忘れが発生しやすいので注意が必要です。年末調整手続の社内告知の段階で、この点についての注意喚起をしておきましょう。
- 本人や配偶者の年収変更
配偶者(特別)控除額は、従業員本人と配偶者の所得金額によって段階的に変動する仕組です。年末調整の書類では、見込額を提出してもらうのですから、12月支給の給与や賞与の額などが見込み違いであれば、12月末日までの実際の支給額が見込と大きく違ってしまうことがあります。この場合には、年末調整の修正が必要になります。
配偶者の年収が会社への申告よりも高いと、配偶者控除や配偶者特別控除の適用範囲を超えてしまう場合があるので、ここも注意が必要です。
<年末調整の訂正期限>
企業で年末調整を修正できるのは、原則として「給与所得の源泉徴収票」を従業員に交付する前であって、なおかつ、「給与支払報告書」の市町村への提出期限である「翌年1月末日まで」です。
源泉徴収票の交付後、あるいは、翌年2月1日以降に再調整が必要となった場合には、2月16日から3月15日の間に従業員が個人的に確定申告をすることになります。
税務署への提出期限に間に合う場合には、年末調整をやり直すことが可能です。しかし、1月31日の期限に間に合わない場合には、その従業員が個人的に確定申告を行わなければなりません。
<【パターン別】年末調整の訂正方法>
- 扶養親族の変更
扶養親族の変更は、添付書類の確認が必要になりますので、従業員から再申告してもらいます。
紙の扶養控除申告書であれば、二重線を引いて修正内容を記入してもらいます。あるいは、修正内容を「異動事由」の欄に書いてもらいます。
従業員から記載方法について問合せがあった場合は、国税庁の《記載例》令和5年分扶養控除等申告書を参照してもらうか、これを参照しながら説明すると良いでしょう。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/pdf/r5bun_02.pdf
- 保険料控除や住宅ローン控除の修正
保険料控除の追加申告には、控除証明書の添付が必要です。
紙の控除申告書であれば、二重線を引いて修正内容を記入してもらいます。
従業員から記載方法について問合せがあった場合は、国税庁の《記載例》令和5年分保険料控除申告書を参照してもらうか、これを参照しながら説明すると良いでしょう。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/pdf/2023bun_05.pdf
住宅ローン控除を追加申告する場合は、申告書に控除証明書を添付して提出してもらいます。
場合によって、記載方法が異なり、やや複雑なのですが、やはり国税庁ホームページ「年末調整で(特定増改築等)住宅借入金等特別控除の適用を受ける方へ」が参考となります。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shotoku/jukari/index.htm
- 本人や配偶者の年収変更
基礎控除や配偶者(特別)控除は、従業員本人の年収や配偶者の年収によって決定します。
再申告が必要な従業員には、申告書を返却し、期限を決めて再提出を依頼します。
従業員から記載方法について問合せがあった場合は、国税庁の《記載例》令和5年分基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書を参照してもらうか、これを参照しながら説明すると良いでしょう。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/pdf/2023bun_07.pdf
<【時期別】年末調整の訂正方法>
- 翌年1月31日以前かつ源泉徴収票発行前の場合
年末調整のやり直しは、従業員に源泉徴収票を発行する前であって、なおかつ翌年1月31日までが期限です。
年末調整後であっても、期限内であれば社内でやり直しを行うことができます。
- 翌年2月1日以降または源泉徴収票発行後の場合
年末調整の訂正期限である翌年1月31日を過ぎた場合、あるいは、既に従業員に源泉徴収票を交付した後にやり直しの必要が生じた場合、これを社内で行うことはできません。
従業員が個人的に確定申告を行うことになります。
<税務署からの通知による修正>
以前の年末調整に誤りがあるとき、約半年後に、税務署からやり直しの通知が届きます。
これは、配偶者(特別)控除や扶養控除、基礎控除に誤りがあった場合がほとんどです。通知が届いたら、従業員に事実を確認します。従業員からの配偶者や扶養家族についての申告のうち、その収入が過少であった場合が多いのです。申告内容を修正し、再計算して不足税額を納付します。
<年末調整の再計算>
再申告後に、修正した申告書に基づいて再計算し精算します。
12月支給分の給与・賞与などで年末調整の精算を行った後、年末調整をやり直す場合は、過不足税額の差額を精算します。
- 年末調整の結果を確認
12月支給分の給与・賞与などで年末調整を精算した際の「すでに精算した源泉徴収税額との過不足額」を把握します。
- 年末調整の再計算
再申告された内容により、「本来の源泉徴収税額との過不足額」を再計算します。
- 差額の計算と精算
上記2つの差額を算出し精算します。
具体的には、過不足額を現金または振込で精算する、または、翌年1月支給分の給与で精算することになります。
現金や振込での精算であれば、内容を示す明細書を発行します。
給与での精算であれば、給与明細書に年末調整の差額を精算するための項目を設けて金額を明示します。
<Workcloud(ワーククラウド)年末調整なら>
年末調整のやり直しが、年末調整業務担当者のせいではなく、従業員が期限を守らなかったり、誤った申告をしたことが原因であったりすれば、大きなストレスを抱えてしまいます。
やはり、年末調整業務を紙ベースの手作業で行うことはお勧めできません。たとえその一部でも、電子化すれば業務効率が向上することは明らかでしょう。さらに、広範囲で一括して電子化を進めてこそ、生産性の向上が期待できるのです。
Workcloudオンライン年末調整なら、3STEPで簡単・正確・スピーディー!
STEP1 従業員が基本情報を入力
従業員ごとにマイページを発行。従業員は基本情報を入力していくだけで、提出ができます。
STEP2 人事・労務が登録情報を確認
従業員が入力した情報の確認を行います。不備や未提出のステータスの絞り込みや一斉修正依頼メールの送信が可能です
STEP3 人事・労務が承認
入力内容が確認出来たら、承認ボタンを押して完了
細かなデータの確認や源泉徴収票の自動作成ができ、提出も電子申告が可能です。自動計算だけではなく、源泉徴収票、給与支払報告書などその他の業務はデイフォースが対応するため、従来の年末調整とは比較にならない効率化が可能になります。
2023年10月30日
社会保険労務士 柳田 恵一
給与・勤怠・労務システムに関するご相談はこちら