【監修付き】初心者向け!給与計算を簡単にできる手順をプロが紹介
従業員への給与支払や、社会保険料の納付、納税といった業務はミスが許されません。しかし初心者でも、賃金支払いの5原則、最低賃金、割増賃金などの基本ルールを理解し、全体の流れを押さえておけば、比較的簡単に給与計算を行うことができるでしょう。
<給与計算の正しい計算手順と方法>
給与計算を行うには、正しい計算手順があります。また、それぞれの手順について、具体的な方法も確立しています。毎月の給与計算は、次の4STEPで行います。
- STEP1 勤怠データの確認
各営業所・各店舗などから、勤怠の集計表とタイムカードなどを回収したり、届けてもらったりして、従業員ひとり一人の出勤日・休日・休暇、残業(時間外労働)や休日労働、欠勤・遅刻・早退などを確認します。企業によっては、この作業が、ある程度自動化されていることもあります。
また、必ずしも毎月確認するものではありませんが、各従業員の基本給や各種手当など個人データに変更がないかチェックしておく必要があります。人事異動があれば、就業規則や賃金規程なども参考にして、間違いなく変更をかけておく必要があります。毎年、決まった時期に人事異動が行われる企業では、この作業が膨大となることもあります。
- STEP2 総支給額の計算
総支給額は次の計算式であらわされます。
総支給額 = 基準内給与 + 基準外給与 |
基準内給与は、基準となる就業規則や給与規程によって定められているため、変動がないことになります。もっとも、パート・アルバイトであれば、時給と勤務時間を掛け合わせたものになりますから、勤務時間によって金額に変動があります。正社員であれば諸手当を含め定額となります。
これに対して、基準外給与は毎月変動します。 時間外手当については、所定労働時間を超え、法定労働時間までは残業時間×1時間あたりの賃金の計算式で算出します。一方、法定労働時間を超える部分については、残業時間×1時間あたりの賃金×割増率の計算式で算出します。ここは、ある程度、給与計算に慣れた人でも戸惑うことがあるポイントです。
法定時間外労働は25%増し、ただし月60時間以上なら50%増し、深夜労働が25%増し、法定休日労働が35%増しが最低基準です。実際の割増率は、就業規則の規定によります。
- STEP3 控除額の計算
STEP2で計算された総支給額が、そのまま従業員に支払われるのではありません。保険料や税金などが控除されて支払われます。
・保険料の控除額
社会保険料と雇用保険料は、それぞれ次の計算式によって求められます。
社会保険料 = 標準報酬月額 × 保険料率
雇用保険料 = 総支給額 × 保険料率 |
これらには、企業の負担分と従業員の負担分があり、当然ですが、保険料の控除は従業員の負担分についてのみ行います。
・税金の控除額
住民税は、区市町村から企業に税額の決定通知書が送付され、企業はこれによって控除額を確認します。
一方、所得税は次の計算手順によって求められます。
1.給与所得 = 給与収入 - 非課税の手当 - 給与所得控除
2.課税所得 = 給与所得 - 所得控除 3.所得税額 = 課税所得 × 税率 - 控除額 |
- STEP4 差引支給額の決定
最後に手取りとなる差引支給額の計算です。
差引支給額は、給与計算の最終到達点であり、最初にご紹介した次の計算式によって求められます。
総支給額 - 控除額 = 差引支給額 |
これで従業員の手取りとなる、金融機関への振込額が確定されます。
・給与計算の控除の種類
「控除」の意味は簡単で、「差し引く」ということにすぎません。
しかし、納税額を減らせる控除には、「所得控除」と「税額控除」があります。
「所得控除」は、課税対象となる所得金額からの控除です。
「税額控除」は、税金から直接控除するものです。
ここの部分に、すでに勘違いがあれば、給与計算がうまくいきません。
また、所得控除には、企業で対応できるものが12種類、対応できないものが3種類あります。企業で対応できないものは、従業員が確定申告を行う必要があります。種類が多いため、見落としや勘違いが生じやすいのです。
<初心者が押さえておきたい給与計算の基礎知識>
給与計算に取りかかる前に、是非とも押さえておかなければならない基礎知識があります。代表的なものを見ていきましょう。
- 賃金支払いの5原則
賃金支払の5原則は、次の5つのルールです。
1.通貨払いの原則
2.直接払いの原則
3.全額払いの原則
4.毎月1回以上払いの原則
5.一定期日払いの原則
これらは、すべて労働基準法第24条に規定されているルールです。違反に対しては、1人1回につき30万円以下の罰金刑が規定されています。
- 毎年改定される最低賃金
従業員に対しては、最低賃金以上の賃金を支払わなければなりません。最低賃金は、都道府県別に時間単価で設定されています。この最低賃金を下回る賃金支払は許されません。違反に対しては、最低賃金法が1人1回につき50万円以下の罰金刑を規定しています。また、企業は実際の支払額と、最低賃金の基準で計算した賃金との差額を、追加で支払う義務を負うことになります。
最低賃金には、都道府県ごとの地域別最低賃金の他に、特定最低賃金と呼ばれる事業別・職業別の最低賃金もあります。
最低賃金は、毎年10月上旬に改定されますので、いつの間にか違反が発生しないように注意しましょう。
- 残業代の支払要件を確認
賃金を割増で支払わなければならない場合と、その場合の割増率については、労働基準法第37条に定められています。
種類 | 支払う条件 | 割増率 |
時間外
(残業手当) |
法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき | 25%以上 |
時間外労働が限度時間(1か月45時間、1年360時間等)を超えたとき | 25%以上 | |
時間外労働が1か月60時間を超えたとき | 50%以上 | |
休日
(休日手当) |
法定休日(週1日)に勤務させたとき | 35%以上 |
深夜
(深夜手当) |
22時から翌5時までの間に勤務させたとき | 25%以上 |
労働基準法に定められた割増率の基準は最低限のものですから、これを下回ることはできませんが、上回る割増率を就業規則に定めることは可能です。
また、法定内残業は割増賃金とする必要がありませんが、割増率を就業規則に定めることは可能です。
<給与計算を担当する際の注意点>
- 勤怠管理上のリスク
勤怠情報をアナログで管理し、手作業でデータを転記しているような場合には、データの入力ミスや情報の移行ミスといった人為的なミスが発生しやすいのです。また、従業員によるタイムカードなどの打刻漏れもあります。
こうしたミスを防ぐには、人手による二重チェック、三重チェックということも行われますが、勤怠管理システムの導入によって一気に解消することも検討したいものです。
また違った角度から、労働時間の適正な把握ができていないというリスクもあります。これについては、厚生労働省から「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」が公表され、これに従うことが指導されていますので、ぜひ参考にしましょう。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000187488.pdf
- 個人情報漏えいのリスク
給与計算で、うっかり従業員の個人情報を漏えいしてしまうと、個人情報保護法違反となることがあるのはもちろん、内容によっては、その従業員に具体的な損害が発生し訴訟となることもあります。
紙ベースで個人情報を扱うことは、かなりリスクの高いことですから、少なくともここの部分は電子化が望まれます。
- 社会保険料や税務上のリスク
給与計算の誤りが、社会保険料や所得税などの計算に反映されてしまうことがあります。
所得税などの過少申告に対しては、追徴課税などを含めた納付を命じられる可能性もあります。追徴課税では、金額の負担が大きくなります。書類の作り直しも必要です。
社会保険総合調査や税務調査によって、多数の誤りが発見された場合には、対応に追われて大変ですから、控除額を含めた計算ミスには十分に注意しましょう。
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以上、給与の基本的な計算方法について、簡単に見てきました。これだけでも、十分に複雑だと感じる方も多いのではないでしょうか。あるいは、不安を覚えた部分があったかも知れません。
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2023年11月03日
社会保険労務士 柳田 恵一
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