公的年金と個人年金との使い分け
<公的年金制度>
日本の公的年金制度は、国民年金(基礎年金)と厚生年金保険の2階建て構造です。
国民年金は、原則として20歳以上60歳未満の国内居住のすべての方に加入義務があります。年金加入者(被保険者)は1号・2号・3号の3つに区分されています。1号は自営業・学生の方など、2号は会社員・公務員の方、3号は2号被保険者に扶養されている配偶者です。
国民年金の上乗せとして、会社員・公務員の方が加入する厚生年金保険があります。なお、公的年金には老後の生活保障だけでなく、「障害年金」や「遺族年金」といった保障もあります。
公的年金の年金額は、賃金・物価の変動率に応じて年度ごとに改定されることになっています。平成16年の法改正により、現在は現役世代の人口の減少などを考慮して、物価等の上昇率から公的年金加入者数の減少率などを差し引いた率で、年金額が改定されることになっています。
<私的年金>
私的年金は、公的年金の上乗せの給付を保障するものとされます。国民年金基金、確定拠出年金、確定給付企業年金、民間の保険会社などが販売している個人年金保険があります。
このうち、確定拠出年金は運用益次第で給付額の変動がありますが、国民年金基金、確定給付企業年金は基本的に変動がありません。個人年金保険は、契約内容により、給付額が固定的なものから、大きく変動するものまであります。
私的年金は、高齢期により豊かな生活を送るための制度として重要な役割を果たしています。企業や個人は、多様な制度の中からニーズに合った制度を選択することができます。
<加入義務>
公的年金は国民皆年金の制度ですから、基本的には国民の全員が国民年金に加入(被保険者資格を取得)し、一定の要件を満たせば厚生年金保険に加入しますので、公的年金から自主的に脱退(被保険者資格を喪失)するということはできません。
これに対して、個人年金などの私的年金は、一定の要件を満たせば自動的に加入ということはなく、老後のご家族の生活などを想定して、個人的な判断で加入することになります。
<年金受給額を増やすには>
働いて厚生年金に加入し続けていれば、70歳までは、加入期間が延びることによって年金額も増えます。また、働いて収入がある期間だけ年金の繰下げをすることも考えられます。
経済的な理由で、国民年金保険料の全部または一部の免除を受けた期間がある方は、その内容に応じて年金額が減額されます。この場合、10年以内に追納すれば、追納した保険料が年金額に反映され受給額が増えることになります。
また、老齢基礎年金が満額でない場合など、60代前半で厚生年金に加入していなければ、国民年金に任意加入して、満額となるまで受給額を増額することができます。
さらに、個人年金を含め、私的年金に加入することも考えられます。
<保険料を減らすには>
厚生年金保険の保険料は、給与や賞与の額に応じて法定されていて、減額や免除の仕組みもありません。保険料を減らすことを考えるのであれば、私的年金の方で調整することになります。
これは現在の生活を取るか、将来の生活を取るか、万一の場合の補償をどうするかという、個人的な判断に従うことになります。
公的年金だけで、老後におけるご家族の生活費を賄うのは難しいかもしれません。そのために私的年金等で公的年金の不足分を計画的に準備しておけば、老後の生活費も安心ではないでしょうか。
2025年2月5日
社会保険労務士 柳田 恵一
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