リソースページへ戻る

年俸制とは?月給制との違いやメリットデメリット、残業代や賞与についても解説

人事情報お役立ちブログ(毎週更新) 給与関連

プロ野球の選手などについては、年俸制がとられています。年に1回の契約更改で、大幅にアップしたりダウンしたりというのは、プロの世界ならではのものでしょう。 

サラリーマンにも年俸制が用いられることがあります。これは、プロ野球選手の年俸制とは異なり、月給制や日給制と同じく給与形態のひとつにすぎません。 

本来の年俸制は、労働時間に関係なく賃金額が決定されるものですが、サラリーマンの年棒制には、労働基準法の労働時間や割増賃金についての規定が、例外なく適用されます。 

 

年俸制とは 

 年俸制とは、1年単位で給与総額の合意・更改を行う給与形態のことです。成果や能力に応じて賃金額を決めることができますが、残業代や賞与の支払方法など注意すべき点が多くあります。 

 

●年俸制と月給制の違い 

年俸制では、一般的に、各従業員の成果や業績に応じて年単位で給与額を決めます。労使間で正式に協議し合意の上で翌年度の給与額が決まります。ほとんどの企業では、今年度の評価を基準に、来年度の年俸を決定するという形をとっています。 

月給制では、各従業員の成果や業績を踏まえて、労使間で協議するということがなく、各企業の給与規程に従い、安定的な給与額が支給されます。個人の成果や業績は、賞与の方で考慮されるのが一般的です。 

 

年俸制では給与額が1年ごとに決められ、月給制では1月ごとに決められるものとされます。 

年俸制は1年の給与総額が決まっているため、よほどのことがなければ、途中で金額が変動することはありません。 

月給制は、企業の業績の変動や従業員の役割変更などによって、月給が変わることもあります。これによって、年間の給与総額が変動することもあります。 

 

●年俸制を導入している主な職種や業種 

年俸制は成果主義を導入している企業で多く用いられ、月給制は社員の勤続年数や年齢などを重視する企業で多く用いられるといわれます。 

年俸制を導入している職種や業種は、以下のようなものがあります。 

 

情報通信業:ITエンジニア、プログラマー、システムコンサルタントなど 

学術研究、専門・技術サービス業:研究者、コンサルタント、弁護士、会計士など 

金融業、保険業:銀行員、証券アナリスト、保険営業など 

 

これらの職種や業種は、労働時間に関係なく、個人の能力や成果に応じて賃金を決めることができるという特徴があります。 

 

別の視点から、年俸制は外資系企業に多く採用されているという実態があります。これは、長らく年功序列・終身雇用制度がとられてきた日本と違い、成果主義や能力主義がとられてきたことの影響です。 

 

年俸制の給与の支払われ方 

年俸制の給与の支払われ方は、企業によって異なりますが、年額を一括で支払うことはできません。労働基準法第24条第2項により、賃金は毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならないとされています。一般的には以下のような方法があります。 

 

・年俸額を12分割して毎月支払う方法 

・年俸額を14分割して、12分の1を毎月支払い、残りの2分を賞与として支払う方法 

・年俸額を15分割して、12分の1を毎月支払い、残りの3分を賞与として支払う方法 

 

●ボーナス(賞与)の扱い 

年俸制の賞与は、労働基準法上の賞与とはみなされない場合が多いため、割増賃金の計算に影響することがあります。 

賞与の金額が、あらかじめ定額で決まっている場合には、労働基準法上の賞与とはみなされません。なぜなら、あらかじめ決まっている年間の給与総額を、このように分割して支払っていると考えられるからです。 

賞与の金額が、会社の業績や個人の実績によって決まり、変動することが予定されている場合には、労働基準法上の賞与とみなされます。 

 

●残業代の扱い 

年俸制の場合、月々の給与支払額を安定させるために、月給制でも用いられることがある定額(固定)残業代を用いるのが一般的です。 

何時間分の残業代を、定額のいくらで支給するのか、正しく計算しなければなりません。 

これは、賞与の扱いによって、大きな影響を受けることになります。 

 

労働基準法上の賞与とはみなされない場合 

賞与の金額が、あらかじめ定額で決まっていて、労働基準法上の賞与とみなされない場合には、賞与を含む1年間の給与総額を、12か月で割り、さらに月平均所定労働時間で割った金額が、割増賃金を計算するときの時間単価となります。 

 

1時間あたりの基本賃金  

賞与を含む1年間の給与総額÷12÷1年間における1か月平均所定労働時間 

 

労働基準法上の賞与とみなされる場合 

賞与の金額が、会社の業績や個人の実績によって決まり、変動することが予定されている場合には、労働基準法上の賞与とみなされますので、賞与を除く1年間の給与総額を、12か月で割り、さらに月平均所定労働時間で割った金額が、割増賃金を計算するときの時間単価となります。 

 

1時間あたりの基本賃金 = 

賞与を除く1年間の給与総額÷12÷1年間における1か月平均所定労働時間 

 

賞与支給にあたって人事評価をする手間はかかりますが、こちらの方が、割増賃金を支給する場合の時間単価が低く抑えられることになります。 

 

年俸制のメリットとデメリット 

年俸制には、次に述べるようなメリットとデメリットがあります。 

 

●メリット 

年俸制には、従業員にとって年間の収入の見通しが立ちやすく、企業にとって人件費予算を中心に、経営計画を立てやすいというメリットがあります。 

また、成果に応じて年収が上がる可能性がありますから、従業員のモチベーションが上がり、企業の生産性が向上しやすいというメリットもあります。 

 

●デメリット 

経営計画が不適切であったり、市場動向が大きく変動したりと、想定外の事態が発生しても、途中で変更し難いのが年俸制のデメリットです。 

年俸制の適用される従業員にとって、年収は一種の既得権ですから、企業の将来的な予測精度が高くなければ維持できません。 

従業員としては、成果を上げ続けなければ年収が下がる恐れもあり、このことが日々の業務の中で大きなプレッシャーとなります。ストレスによって成果が出にくくなり、これがまたストレスになるという、悪循環に陥ることもあります。 

 

年俸制と月給制の比較 

 年俸制は、月給制とは給与計算の方法が異なり、また、労使の対立をもたらす局面もあります。 

 

●給与計算の違い 

 月給制は給与額が1月ごとに決められるため、年度の途中で変動することもあります。従業員本人が、毎月、同じ給与額を見込んでいても、人事異動によって大きく減少する可能性もあります。特に、業績悪化の場合には、ポストの減少などによって、人事異動に伴う給与の減額が発生しやすくなります。 

この点、年棒制は1年間にわたって給与が安定しています。収入が安定することで、家計のやりくりも容易になります。 

ただし、欠勤控除の具体的な計算方法などの規定が就業規則に置かれていれば、月給制だけでなく年俸制でも、欠勤控除が行われることになります。 

 

●労働者と雇用者の視点から 

年俸制の場合、各従業員の年間の成果や業績に対する評価を踏まえて、労使間で協議し、翌年度の給与額を合意するという形がとられます。 

ここで、成果や業績のとらえ方について、労使で考え方に大きな隔たりがあったり、評価制度が適正に運用されていなかったりする場合には、給与額の合意が得られにくいという問題があります。 

また、個人の成果や業績とは別に、企業の実績を踏まえた給与額の決定を行いますので、大きな成果を上げたにもかかわらず、ほとんど給与額が変わらないということもありえます。 

この点、月給制であれば、労使間の協議や合意が必要ありませんし、半年や1年間の成果や業績は、主に賞与に反映されるので、年収を大きく左右しないという安心感があります。 

 

●実装のベストプラクティス 

日本の多くの企業は、年功序列・終身雇用制度の影響を長く受け続けたため、まだまだ月給制が一般的です。 

一方で年俸制は、個人の成果や実績が給与にストレートに反映されるため、特に若い従業員のモチベーションアップをもたらしやすい制度です。 

近年では、労働市場のグローバル化などの影響もあって、成果が期待できる優秀な人材の確保を目指し、年俸制を導入する企業が増えています。 

 

月給制から年棒制へとスムーズに切り替えるには、対象となる人材への丁寧な説明を行うことにより、納得してもらうことが必要です。また、本人の同意を得たうえでの切り替えが適切です。 

 

そして、納得のできる年俸制のベースとなっているのは、人事考課制度の適正な運営です。評価の根拠となる事実の収集・蓄積の方法や、評価基準の客観化など、人事考課制度そのものの適正化だけでなく、考課者の教育・訓練も充実したうえで、年俸制を導入することをお勧めします。 

 

 Dayforce Workcloud(デイフォース ワーククラウド)の優れた特長 

以上、月給制と比較しながら、年俸制についてご説明させていただきました。 

現在月給制の従業員について、年俸制に切り替えたり、新たに年俸制で新人を採用したりということになれば、月給制にも年俸制にも対応できる給与計算でなければなりません。 

 

Dayforce(デイフォース)の「Dayforce Workcloud」なら、100%自社開発のクラウドシステムのため、給与管理だけでなく、勤怠、年末調整、各種申請も含めあらゆる機能のワンシステム化が実現できました。「誰もが使いやすい」を追究し、クラウドでのデータ一元管理やマルチデバイスの対応はもちろん、ワンクリックで英語表示できるので、外国人従業員の方も安心して使用することができます。 

在宅勤務にも対応し、出勤した日だけワンクリックで交通費の精算ができる機能など、最新の機能追加やカスタマイズ開発に柔軟に対応しております。 

ぜひともDayforce Workcloudシステムの導入をご検討ください。 

2024年5月10日

社会保険労務士 柳田 恵一

給与・勤怠・労務システムに関するご相談はこちら