【監修付き】年末調整手続も電子化へ!国税庁の取組みとは?メリットやデメリット、今後想定される流れも解説。
<年末調整手続の電子化とは?>
国税庁は、電子政府の一環として、年末調整手続の電子化にも取組んでいます。電子政府とは、主にコンピュータネットワークやデータベース技術を利用した政府を意味します。広義では、こうした技術の利用によって行われる政府の改善が含まれます。
国税庁が取り組んでいる年末調整手続の電子化について、国税庁のホームページでは、次のように説明しています。
●これまでの年末調整手続
1 従業員(給与等の支払を受ける方)が、保険会社、金融機関、税務署等(以下「保険会社等」といいます。)から控除証明書等を書面(ハガキ等)で受領
2 従業員が、保険料控除申告書又は住宅ローン控除申告書に、1で受領した書面(ハガキ等)に記載された内容を転記の上、控除額を計算し記入
3 従業員が保険料控除申告書及び住宅ローン控除申告書など、年末調整の際に作成する各種申告書(以下「年末調整申告書」といいます。)を作成し、控除証明書等とともに勤務先(給与等の支払者)に提出
4 勤務先が提出された年末調整申告書に記載された控除額の検算、控除証明書等の確認を行った上で、年税額を計算
という流れで進められていました。
●年末調整手続が電子化された場合
1 従業員が、保険会社等から控除証明書等を電子データで受領
2 従業員が、国税庁ホームページ等からダウンロードした年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(※)に、住所・氏名等の基礎項目を入力し、1で受領した電子データをインポート(自動入力、控除額の自動計算)して年末調整申告書の電子データを作成
3 従業員が、2の年末調整申告書データ及び1の控除証明書等データを勤務先に提供
4 勤務先が、3で提供された電子データを給与システム等にインポートして年税額を計算
※ 年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(年調ソフト)とは、年末調整申告書について、従業員が控除証明書等データを活用して簡便に作成し、勤務先に提出する電子データ又は書面を作成する機能を持つ、国税庁が無償で提供するソフトウェアです。
|
出典:国税庁ホームページ 年末調整手続の電子化の概要・メリット
https://www.nta.go.jp/users/gensen/nenmatsu/nencho_01.htm
出典:国税庁ホームページ 年末調整手続の電子化に向けた取組について
https://www.nta.go.jp/users/gensen/nenmatsu/nencho.htm
- 電子化できる申告書
電子化できる申告書として、公表されているものは、次のものです。
・給与所得者の扶養控除等申告書 ・従たる給与についての扶養控除等申告書 ・給与所得者の配偶者控除等申告書 ・給与所得者の基礎控除申告書 ・給与所得者の保険料控除申告書 ・給与所得者の住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除申告書 ・所得金額調整控除申告書 ・退職所得の受給に関する申告書 ・公的年金等の受給者の扶養親族等申告書
|
出典:国税庁ホームページ 令和3年分年末調整のしかた
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/nencho2021/01.htm
※令和4年の年末調整の計算に当たっては、昨年の令和3年分から比べて大きな改正事項はありません。
- 電子化できる添付書類
電子化できる添付書類は、次のものです。ただし、添付書類を電子データで提出するには、従業員がご自分で保険会社などへ控除証明書の電子データ発行を依頼する必要があります。
・生命保険料控除証明書 ・地震保険料控除証明書 ・寄附金の受領証 ・寄附金控除に関する証明書(特定事業者発行用) ・特定口座年間取引報告書 ・住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書 ・社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除に係る証明書
|
出典:国税庁ホームページ 控除証明書等の電子的交付について 電子的控除証明書等の発行者の方へ
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kakutei/koujyo.htm
<年末調整手続を電子化するための準備と手順>
国税庁は、年末調整手続をスムーズに導入するための準備と手順について、次のように説明しています。
●勤務先側での準備
1 電子化の実施方法の検討 年末調整の電子化を実施するに当たり、従業員が使用する年末調整申告書作成用のソフトウェアについてどのソフトウェアを使用するか、電子化後の年末調整手続の事務手順をどうするかなどを検討します。
※ 従業員が提供する年末調整申告書データは、国税庁から提供する年調ソフトだけでなく、仕様公開を通じ同様の仕組みを取り込んだ民間のソフトウェアでも作成することができます。
2 従業員への周知 従業員から年末調整申告書を電子データにより提供を受けるに当たり、法令上は事前に従業員から同意を得る必要はありません。 しかし、電子化に当たっては、従業員においても、保険会社等から控除証明書等データを取得するための手続など、事前準備が必要となることから、電子化する際には従業員への早期の周知が必要となります。 また、1で決定した、従業員が使用する年末調整申告書作成用のソフトウェアや事務手順について周知する必要があります。 なお、従業員から控除証明書等データの取得方法について照会があった場合には、マイナポータル連携により取得することができる旨周知願います。従業員の方のマイナンバーカードの取得が間に合わないなどにより、マイナポータル連携による取得ができない場合は、その従業員が契約している保険会社等のホームページ等から控除証明書等データを取得するよう周知願います。
3 給与システム等の改修等 従業員から提供を受ける年末調整申告書データや控除証明書等データを、ご利用の給与システム等にインポートし、年税額等の計算を行うためのシステムの改修等を行います。
●従業員側での準備
1 年末調整申告書作成用のソフトウェアの取得 保険会社等から取得する控除証明書等データを利用して年末調整申告書データを作成するためのソフトウェア(国税庁が提供する「年末調整控除申告書等作成用ソフトウェア」など)を取得します(利用するソフトウェア等については勤務先に確認してください。)。
2 控除証明書等データの取得(マイナポータル連携を利用しない場合のみ) 保険会社等のホームページ等から、控除証明書データを取得します。(具体的な取得方法は保険会社等により異なります。)。
※ マイナポータル連携を利用する場合は、年末調整申告書データの作成中に、民間送達サービスに送達された複数の控除証明書等データをマイナポータルを通じて一括取得するため、2の手続は不要となります。
|
出典:国税庁ホームページ 年末調整手続の電子化へ向けた準備
https://www.nta.go.jp/users/gensen/nenmatsu/nencho_02.htm
<年末調整手続の電子化のメリットとデメリット>
国税庁は、各種手続の電子化を推進する立場ですので、年末調整手続の電子化のメリットをアピールしていますが、デメリットも存在しますので、これについて見ていきましょう。
- 年末調整手続の電子化のメリット
年末調整手続の電子化のメリットについて、国税庁のホームページでは、次のように説明しています。
年末調整手続を電子化することにより、以下のようなメリットがあります。
≪従業員のメリット≫ 従業員は、これまでの手書きによる手続(年末調整申告書の記入、控除額の計算など)を省略でき、年末調整申告書の作成を簡素化できます。 また、書面で提供を受けた控除証明書等を紛失した場合は、保険会社等に対し、再発行を依頼しなければなりませんでしたが、その手間も不要となります。
※ 従業員が、「マイナポータル連携」を利用する場合には、複数の控除証明書等を一度の処理で取得することができますので、従業員の利便性がより高まります。
≪勤務先のメリット≫ 勤務先は、従業員が年調ソフトで作成した年末調整申告書データを利用することにより、控除額の検算が不要となります。 また、控除証明書等データを利用した場合、添付書類等の確認に要する事務が削減されます。 さらに、従業員が年末調整申告書作成用のソフトウェアを利用して控除申告書を作成するため、記載誤り等が減少し、従業員への問合せ事務も減少することが期待されます。 加えて、書面による年末調整の場合の書類保管コストも削減することができます。
※ 年末調整申告書データを利用して年税額の計算等を行うためには、勤務先の給与システム等が年末調整申告書データの取込みに対応する必要があります。詳しくはご利用の給与システム等の開発業者等にお問合せください。
|
出典:国税庁ホームページ 年末調整手続の電子化の概要・メリット
https://www.nta.go.jp/users/gensen/nenmatsu/nencho_01.htm
- 年末調整手続の電子化のデメリット
年末調整手続の電子化のデメリットについて、国税庁のホームページでは、説明していないのですが、従業員、勤務先について、次のようなデメリットがあります。
≪従業員のデメリット≫
スマートフォンやパソコンを持っていない、あるいは、操作に自信がないという従業員にとっては、年末調整手続の電子化が、大きな負担となることは明らかです。
また、添付書類を電子データで提出するには、従業員がご自分で保険会社などへ控除証明書の電子データ発行を依頼する必要があり、その方法などによっては、従業員の負担が大きくなります。
≪勤務先のデメリット≫
政府は電子政府の一環で、政府が推奨するようなデジタル環境を構築するよう企業に求めているのですが、これには既存のシステムとの相性や、人件費を含めた導入コスト・ランニングコストの問題があります。
また、個人情報でもある従業員のメールアドレスを収集・管理する手間も増えます。
<今後想定される流れ>
政府は、継続的に電子政府の推進を行っていく方針です。
平成30年度税制改正により「電子情報処理組織による申告の特例」が創設され、事業年度開始の時点で資本金の額等が1億円を超える大法人が行う法人税等の申告は、e-Taxにより提出しなければならないこととされました。
また、令和3年1月1日以降は、法定調書の提出枚数が100枚以上の場合の特例が設けられています。この「100枚」の基準は、企業全体ではなく支店・営業所・工場など事業場単位で判断されます。
法定調書の種類ごとに、前々年の提出すべきであった当該法定調書の提出枚数が「100枚以上」であるものについては、インターネットを利用したe-Tax(国税電子申告・納税システム)を使用して送付する方法、光ディスク等(CD、DVDなどをいいます。以下同じ)を使用して提出する方法または国税庁長官の認定を受けたクラウドサービス等を利用して提出する方法によらなければなりません。
例えば、令和3年1月に提出した「給与所得の源泉徴収票」の枚数が「100枚以上」であった場合には、令和5年1月に提出する「給与所得の源泉徴収票」はe-Tax、光ディスク等またはクラウド等により提出する必要があります。
|
出典:国税庁ホームページ タックスアンサー No.7455 法定調書の提出枚数が100枚以上の場合のe-Tax、光ディスク等又はクラウド等による提出義務
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hotei/7455.htm
国税庁を含め、政府による電子化の拡大は今後も推進され、中小企業や小規模事業場でも多くの手続が電子化の対象となることでしょう。
<Workcloud(ワーククラウド)システムなら>
年末調整業務の電子化は基本的には義務ではないのですが、その一部でも電子化すれば業務効率が向上することは明らかでしょう。しかし、広範囲で一括して電子化を進めてこそ、生産性の向上が期待できるのです。
また、国税庁が無償で配布するソフトを利用して、自社で電子化を進めることも可能ではありますが、法改正などに対応したバージョンアップも自社で行わなければなりません。
Workcloudオンライン年末調整なら、3STEPで簡単・正確・スピーディー!
STEP1 従業員が基本情報を入力
従業員ごとにマイページを発行。従業員は基本情報を入力していくだけで、提出ができます。
STEP2 人事・労務が登録情報を確認
従業員が入力した情報の確認を行います。不備や未提出のステータスの絞り込みや一斉修正依頼メールの送信が可能です
STEP3 人事・労務が承認
入力内容が確認出来たら、承認ボタンを押して完了
細かなデータの確認や源泉徴収票の自動作成ができ、提出も電子申告が可能です。自動計算だけではなく、源泉徴収票、給与支払報告書などその他の業務はデイフォースが対応するため、従来の年末調整とは比較にならない効率化が可能になります。
2023年10月20日
社会保険労務士 柳田 恵一
給与・勤怠・労務システムに関するご相談はこちら