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賞与の意図的な減額は可能?法令をもとにプロが解説します

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<法令の規定>

労働基準法は、使用者に賞与の支払を義務づけてはいません。

しかし、支給することがある場合には、重要な労働条件の一つとして明示することを義務づけています。〔労働基準法第15条第1項、労働基準法施行規則第5条〕

また、パートタイム労働者や有期雇用労働者を採用する場合で、正社員などフルタイムの無期雇用労働者とは異なる基準や計算方法で賞与を決定している場合、あるいは賞与支給の有無に違いがある場合には、その違いの内容と理由を説明しなければなりません。〔パートタイム・有期雇用労働法第14条第1項〕

「賞与の支給額は、会社の裁量で自由に決定できる」と言われることがあります。

しかし、これは不正確な表現であって、正確には「賞与支給の有無や、支給する場合の支給額の決定方法を自由に定めることができる」ということになります。

そして就業規則のある会社では、就業規則、賃金規程、賞与支給規程などに関連規定が置かれることになります。

 

<懲戒による減額>

懲戒による減給については、労働基準法に次の規定があります。

 

(制裁規定の制限)

第九十一条 就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。

 

この規定は、賞与にも適用されますので、懲戒処分としての減給の制裁が複数重なった場合には、賞与の10分の1までは減額が可能ではあります。

もっとも、減給の制裁がいくつも重ねて行われるのは、いかにも不自然ですから、懲戒権の濫用となり無効となるのが一般でしょう。〔労働契約法第15条〕

 

<裁量の余地がない規定>

賞与の支給額については、就業規則の範囲内で会社の裁量により自由に決定できるとはいえ、規定の内容が次のようなものであれば、裁量の余地がなく一義的に決定されてしまうことになります。

・基本給の〇か月分を支給

・売上高の〇%を支給

・粗利高の〇%を支給

 

<裁量の余地がある規定>

賞与に関する社内規定が、次のようなものであれば会社に一定の裁量権があります。

 

(賞与)

第◯条 賞与は、会社の業績等を勘案して毎年7月および12月に支給する。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由により、支給時期を延期し、又は支給しないことがある。

2 前項の賞与の額は、会社の業績及び労働者の勤務成績などを考慮して各人ごとに決定する。

 

この規定の第1項によれば、賞与支給の有無や支給時期について、「会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由」があれば、7月と12月に支給するという原則を変更できることになります。

また、この規定の第2項によれば、各人の賞与支給額を「会社の業績及び労働者の勤務成績など」を根拠に増減できることになります。

もっとも、「労働者の勤務成績など」の中にどこまでの事項が含まれるかは、必ずしも明確ではありません。

結婚したから10万円増額、阪神タイガースのファンだと表明したから3万円減額など、プライベートなことを理由とする増減が許されないのは当然だと考えられます。

 

<法的な紛争となりうる場合>

たとえば、ある人の賞与が通常よりも大幅に減額されていて、その人が「これは年次有給休暇の取得日数が多いことに対する嫌がらせではないか」と疑って、会社に対して説明を求めたところ、会社側から十分な説明がなかったとします。

この場合、あるべき支給額と実際の支給額との差額を損害として、会社に損害賠償請求訴訟を提起するかもしれません。

こうなれば、裁判所は会社に合理的な説明を求め、会社が説明に失敗すれば、会社に裁量権の濫用があった、または裁量権を逸脱していたということで、損害賠償の支払を命ずることがあります。

また、人事考課の結果に基づいて賞与支給額が決定される会社の場合でも、その評価が具体的な事実の認定に基づいて行われたことなど、評価が適正であったことを説明できるようにしておく必要があります。

こうしてみると、労働者が民事訴訟の提起に踏み切るほど、大幅な減額をするのは考えものですし、どうしても行いたい場合には、それ相当の根拠資料を準備したうえで行わなければならないでしょう。

 

2023年1月25日

社会保険労務士 柳田 恵一