介護離職の防止
<社会背景>
少子高齢化の傾向が継続しており、厚生労働省の定義する団塊世代(昭和22(1947)年~昭和24(1949)年生まれ)は70歳代に入りました。
介護保険の要支援・要介護認定者数も増加傾向にあります。
介護する側の人には、働き盛りで企業の中核を担う管理職や職責の重い人材が多く含まれています。
<育児との違い>
育児介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
)には、育児と介護の両方について規定が並んでいます。
しかし、育児が計画的に対応できるものであるのに対して、介護の必要は突発的に発生します。
また育児は、ある程度まで画一的にイメージすることもできますが、介護の場合には、その内容も期間も千差万別です。
このことから、行政や企業の対応も容易ではなく、仕事と介護の両立が困難となる可能性があります。
<育児介護休業法の対象>
要介護状態の家族の介護等をするために、育児介護休業法に基づく制度が利用できます。
ここで「要介護状態」とは、介護保険で要介護2以上である場合と、要介護認定を受けていない場合でも2週間以上の期間にわたり介護が必要な状態を指します。
また「家族」には、配偶者(事実婚含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫が含まれます。
<介護休業>
対象家族を介護するため、対象家族1人につき通算93日、3回まで分割して取得できます。
雇用保険から、介護休業給付金(賃金の67%)が支給されます。
最低限利用できる法定の制度ですから、勤務先の制度とは別に利用できます。
介護休業期間は、直接介護にあたるための期間ではなく、終了後に復職できるよう、介護の体制を整える期間と考えられます。
<介護休暇>
労働基準法の年次有給休暇とは別に、対象家族が1人の場合は年5日、2人以上の場合は年10日まで、半日または1日単位で取得できます。
最低限利用できる法定の制度ですから、年次有給休暇とは別に利用できます。
なお、令和3(2021)年1月1日からは、1時間単位での取得が可能ですから、就業規則の改定も必要です。
<勤務時間短縮等>
次のいずれかの制度を利用できるよう、措置を講じることが、事業主に義務付けられています。
・短時間勤務
・フレックスタイム
・時差勤務
・介護費用の助成措置
<不利益取扱の禁止>
法定の制度や、就業規則上の制度を利用する申出等に対して「不利益な取扱い」をすることは、禁止されています。
退職の強要や、正社員をパートにする等の不利益な取扱いはできません。
また会社には、制度を利用しようとする者に対し、上司・同僚などが嫌がらせ(ハラスメント)をしないよう防止措置を講じる義務があります。
万一嫌がらせが発生した場合のために、会社の相談窓口を明確にしておくことも求められます。
社会保険労務士 柳田 恵一