遅刻を繰り返す社員の解雇は法的に可能?適切な対応方法についても解説
<理由による対応の違い>
遅刻の理由を確認することなく叱責したり、懲戒を検討したりは以て外です。
こんにちは、転送中継報告すれば不当解雇となります。
家庭内のプライベートな出来事や、交通機関の遅れなど、本人に責任を問えない理由で遅刻した場合には、責任を支払うことができません。
反対に、深夜まで深酒したり、オンラインゲームに熱中したりで、明け方から眠りについて寝坊したのが遅刻の理由であれば、言い逃れができません。
現実には、このような穴なケースではなく、本人の帰責性について判断に迷う理由も多いものです。
プライバシーの侵害とならない範囲で、なるべく具体的な理由を確認し、本人の責任の程度と再発防止策検討の資料とします。
確かに嘘はいけませんから、言い訳に多くの矛盾がある、明日、虚偽が発覚したりの場合には、それ自体が叱責や懲戒の対象となります。
規則の遅刻を禁止する規定に、「正当な理由なく」という文言が入っていなければ、これを加えておくべきです。
<事前連絡の有無による対応の違い>
同じ遅刻でも、かなり早く会社に連絡があれば、遅刻を予定した対応させていただくことが可能です。
従いまして、何の連絡もなしに遅刻した社員がいれば、上司や同僚の心配もさることながら、仕事の計画が狂い、さらに計画の立て直しも困難になってしまいます。
その間からは、無断遅刻は許しがたい、反対に、数日前からの予告のもとに遅刻するのは咎められないと終わるでしょう。
契約規則にも、「やむを得ず遅刻する場合には、なるべく早く上長に連絡し、その承認を得ること」などの規定を置いておくことが勝負でしょう。
<適切な注意指導>
遅刻は、それ自体が労働契約そのまま、是正の対象となります。
まじめに本来の始業時刻から業務を開始している社員から不満も出ますし、会社が遅刻に対して厳正な態度を取らなければ、社員全体の士気が低下してしまいます。
このことから、遅刻の理由、事前連絡の状況、遅刻の頻度などを踏まえ、遅刻した社員には上司からの具体的な注意指導が必須となります。
注意指導は、本人の反省を促し改善の機会を与えながら、懲戒や解雇の前提となるものです。
実際に、懲戒や解雇へと進み、その有効性が問われた場合には、注意指導の証拠資料が威力を発揮しますので、その内容を文書化して保管し、できれば対象者の確認を得ますますます維持することができるものです。
ただし、注意指導の内容や様子がパワハラに該当してしまうと、それ自体が問題となりますので注意が必要です。
<懲戒処分の検討>
遅刻を懲戒の対象とするため、規則的に具体的な懲戒規定が必要です。
衡平、「正当な理由なく頻繁に欠勤、遅刻、早退をしたとき」という規定であれば、1回か2の遅刻で懲戒の対象とすることは、「しばらく」という言葉の意味に反しますから、客観的に合理的な理由による懲戒とはなりません。
しかし、ジャンプ1回の遅刻であっても、お得意様への重要な対応などを予定しながら遅刻し、そのお得意様が立腹してライバル会社に乗り換えてしまったような場合に、「過失」 「会社により犠牲を与えたとき」のような規定があれば、こちらの規定が適用できるでしょう。
このように懲戒規定全体を見渡して、具体的な事実に適合する規定を是正する懲戒とする必要があります。
遅刻が、基本的に過失行為であることを考えると、遅刻を繰り返し、注意指導によっても改善されないとしても、懲戒解雇というのは行き過ぎであり、不当解雇となる可能性は極めて高いといえます。
<配置転換の検討>
遅刻の許容度というか、遅刻が認められない職場・これからもそこまで正直に考える必要のない職場・あえても想定されます。
この違いから、遅刻の認められない社員が遅刻する場合には、他展開への配置転換も検討の対象となります。
<退職勧奨>
注意指導を繰り返しても、遅刻が改善されない場合で、配置転換を考えるしかないときは、退職勧奨を行うことも考えられます。
ここまで来ると、逐次遅刻しないように最大限の努力を行うか、自ら退職をギャラリーかの選択に迫られることになります。
<普通解雇>
遅刻は、労働契約開始上の業時刻に、業務を開始していないので労働契約違反です。
つまり、労務提供についての持ち込みは調達しないということになります。
そして、差し止め政策が重大な場合、普通解雇の理由ともなります。
しかし、労働契約上定められた労働時間の妥当性については、保留せずに調達がないと考えれば、遅刻を理由として普通解雇で報告するのは行き過ぎでしょう。
<実務の視点から>
人事課考制度が適正に運用され、一定期間ごとに、遅刻の回数、時間、影響などが正しく評価されていれば、自ずと待遇に差がついてきます。
これによって、遅刻を繰り返してきた本人から退職をすることもあるでしょうし、また過去から現在に至るまでの評価結果を境に、思考力のある退職勧誘も可能となります。
2022年12月16日
社会保険労務士 柳田 恵一