【監修付き】月の途中で退職した従業員の社会保険料はどうする?
従業員が月末ではなく月の途中で退職した場合に、最後に支給する給与から社会保険料を控除するのかしないのか、また、控除するとしていくらなのか迷うことがあるでしょう。
誤った処理をしてしまうと、退職者への返金や追加徴収が発生しますから、きちんと理解して間違えないようにしましょう。
月の途中で退職した場合の社会保険料の基本
社会保険料の基本を押さえておけば、従業員が月の途中で退職した場合の社会保険料の徴収についても、迷うことはありません。
●月の途中での退職と社会保険料
社会保険料については、日割り計算が発生しない仕組みがとられています。
具体的には、入社日(資格取得日)の当月分から、原則として、退職日(資格喪失日の前日)の前月分までの社会保険料が発生します。
例外的に、末日に退職(翌月1日に資格喪失)した場合には、退職月分の社会保険料が発生します。この場合には、丸々1か月の社会保険加入期間(被保険者期間)があるからです。
●社会保険料の計算方法
このように社会保険料は、1か月単位で発生し徴収されることになります。
具体的な計算方法については、次の記事を参考にしてください。
退職日による社会保険料の変動
末日以外の退職では、退職月分の社会保険料が発生しないというルールがあるため、退職日選びは慎重にする必要があります。
●退職日の選び方と社会保険料の影響
社会保険料のことを考えなければ、給与計算の締切日を退職日とすることによって、給与計算が複雑になるのを防ぐことができます。なぜなら、欠勤控除などの日割り計算が発生しないからです。
給与計算の締切日が末日以外であれば、この締切日を退職日とすることによって、退職月分の社会保険料が発生しません。
●月末退職とその他の日付での違い
ところが、給与計算の締切日が末日の場合には、締切日に合わせて月末退職とすると、退職月分の社会保険料が発生してしまいます。
社会保険料は、労使折半ですから、退職者の社会保険料だけでなく、会社の社会保険料も発生してしまいます。
このことから、退職者が月末退職にこだわる特別な理由がない限り、月末より1日でも早い退職日を選ぶことには十分な理由があります。
賞与に関する特例
給与だけでなく、賞与にも社会保険料が発生します。
●月の途中での退職と賞与との関係
給与については、社会保険料が1か月単位で発生し徴収されるのですが、賞与の場合には、支給額の千円未満を切り捨てた標準賞与額について社会保険料が発生します。
ですから、日割り計算が発生しないようにするという配慮は必要ありません。
●退職月の賞与と社会保険料
上記の標準賞与額には上限が設定されています。健康保険では年度の累計額573 万円(年度は毎年4月1日から翌年3月31日まで)、厚生年金保険は1か月あたり150万円です。
退職月(末日退職の場合には退職の翌月)に賞与が支払われた場合、保険料は発生しませんが、退職日までに支払われた賞与は、年度累計の対象となるため、賞与支払届の提出が必要です。
社会保険の資格喪失と手続
社会保険では、退職日の翌日を資格喪失日とします。健康保険の保険証は、退職日当日まで使えますが、退職日の翌日以降は使えないことを考えると、分かりやすいでしょう。
社会保険の加入者(被保険者)が、退職により資格を喪失する場合には、事業主が事実の発生から5日以内に、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届/厚生年金保険70歳以上被用者不該当届」を、事務センターまたは管轄の年金事務所に提出します。
●退職後の健康保険の任意継続
このように、退職日の翌日をもって、社会保険の資格を喪失することになるのですが、健康保険については一定の要件を満たし、期限内に手続をすることによって、加入し続けることができます。
これを、健康保険の任意継続といいます。
任意継続によって、国民健康保険に切り替えるよりも、保険料が安くて済む場合が多いため、広く利用されています。
●任意継続の条件と手続
任意継続を行うには、退職日までに継続して2か月以上の健康保険加入期間(被保険者期間)があることが要件となります。
そして、退職日の翌日から20日以内に、協会けんぽなどの保険者に、任意継続被保険者資格取得申出書を提出する必要があります。
保険料は、会社員時代の倍額が基本ですが、負担する保険料には上限があるため、国民健康保険の保険料より安い場合が多いのです。具体的な保険料については、退職者本人が、市町村の保険年金課などの窓口で確認することができます。
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社会保険料は、たとえば協会けんぽの健康保険料の料率が都道府県ごとに定められていたり、どの保険料の料率も1年単位、場合によっては半年で変わったりします。この改定に合わせて、給与計算も変えていかなければなりません。
また、退職者が出た場合には、給与や賞与について発生する社会保険料について、正しい判断を求められることにもなります。
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2024年2月22日
社会保険労務士 柳田 恵一
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